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どう防ぐ、東京に流出する地方の土地とお金

印刷用ページを表示する 掲載日:2023年9月11日

一般社団法人 持続可能な地域社会総合研究所 所長 藤山 浩(第3253号 令和5年9月11日)

 地方における人口減少が加速しています。特に、一人暮らしの高齢者が亡くなり、その土地や金融資産が、都会に居住する息子、娘に相続されるケースが増えています。

 私は、過疎が先行して進んだ島根県益田市匹見町で、土地所有状況を2006年に調査したことがあります。その時点で、匹見町内に住む人が所有する土地の割合は、52.9%まで落ちていました。よって、半分近くの土地が不在地主の所有となっており、その居住範囲は全国26都府県に広がっていました。主な人口流出先の1つ、東京都民の所有地は、6%に達していました。そして、土地所有者が住所不明の割合も8%と、所有の空洞化も進んでいたのです。

 現在では、土地所有の不在化や空洞化の割合は、さらに高まっていることでしょう。2020年の国土交通省調査では、全国における所有者不明の土地の割合は、24%にもなっています。これに対して、やっと相続登記の義務化や相続土地の国庫帰属制度の創設、所有者不明土地・建物の管理制度などの対策が始まったところです。

 一方、貯金等の金融資産の流出も顕著となっており、三井住友信託銀行調査月報(2022年11月号)によれば、今後30年間において、東京圏には全国から58兆円が流入し、他地域への流出額を差し引いても、相続の発生に伴い38兆円の資産増加となります。この結果、家計金融資産の4割超が東京圏に集中します。

 これから循環型社会に向かう時代の中では、地方の再生可能な資源やエネルギーこそ主役です。東京に土地所有権や資金を集めても有効活用は進みません。地方に暮らす私たちは、まず、急速に市町村における土地、資金の流出状況の実態把握を進めるべきです。次には、土地利用を担うローカルコモンズ的な土地共同活用の法人設立が必要になるでしょう。そして、再生可能エネルギー活用を促進する太陽光発電や家庭用蓄電池、EV等を初期費用ゼロで実現するリース会社を立ち上げ、高齢者の金融資産を地元投資していただける枠組みづくりを進めるべきです。