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花らんまんの礼文島へ

印刷用ページを表示する 掲載日:2023年7月31日

フリーアナウンサー 青山 佳世(第3248号 令和5年7月31日)

植物ブームの中、花らんまんの礼文島を訪ねることにしました。10数年前に視察で訪れたときは、花の季節が終わっていましたが、今回は希少種と言われる礼文ならではの花々に出会えそうです。本州では標高2000メートルほどでないと観ることのできない高山植物を、礼文島では海抜ゼロメートルから観ることができ、約300種類の高山植物が咲き誇ります。

レンタカーは数か月前から満車状態のため、ハイキングコースの入口までは、1日に数本しかない路線バスだけが頼りです。1番の人気は「桃岩展望台コース」と呼ばれるルートで、一面のお花畑を楽しむことができます。木道もよく整備され、昨日までの雨も気にせずに歩くことができます。入り江になった崖の上を歩くと、冷たく強い風が吹き抜け、飛ばされそうになりましたが、その厳しい環境が高山植物にとっての最適な場所のようです。7月上旬から「レブンウスユキソウ」らんまん!思わずため息です。これは礼文町の町花になっている花で、ヨーロッパでいう「エーデルワイス」に属する白くて小さな可憐な花の絨毯です。この季節でしか観ることのできない礼文の風景を目に焼き付けました。

礼文では2014年に50年に1度という豪雨に見舞まわれ、あちらこちらに被害がでました。災害復旧として、なだれ防止柵、土砂防護柵などをつくり、島の人々の生活と貴重な植物の保護をしています。かつての山火事によって失われた森林は熊笹に変わっていましたが、そこをかつての水源保安林に戻すべく植林が行われていました。海から吹き付ける強風に負けないように間伐材で作った防風柵を作って、その中に小さな苗木を植えつけます。手をかけて造林したクロマツやアカエゾマツも、冬は雪のお布団に包まれ、風にも負けず、すくすくと育っていました。

ちょうど海ではウニ漁が真っ盛り。生きたウニを食べることができるのも旅人の楽しみですが、海の幸を持続的にとることができるように、漁協婦人部の皆さんも「森は海の恋人」と言われるように海の恵みが持続するようにと願って植樹活動に参加なさっています。

お宿で働くスタッフも全国から集まった礼文好きな人たちが多く、休日には、島内を歩いて花の情報を集めています。宿の皆さんと花談義・ウニ談議に花を咲かせるのも楽しみの1つです。

礼文島の希少な植物を守るため、外来の植物を取り除く活動もなさっているとか。そういえばニュージーランドなどの離島も、島固有の植物を守るため、フェリーや航空機から降り立つときに靴底の消毒などを徹底して行っていました。外来種が入り込んでからでは遅いからですね。

島の魅力を楽しむ時には、自然の保護もセットで考えていただくことは、今や当たり前の時代です。花らんまんの浮島を、皆さんの手でいつまでも残したいものです。