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自治と循環そして共生が平和への道

印刷用ページを表示する 掲載日:2023年2月13日

一般社団法人 持続可能な地域社会総合研究所 所長 藤山 浩(第3229号 令和5年2月13日)

ロシアのウクライナ侵攻以来、世界的に戦争の臭いが立ちこめている。日本国内においても、ここ最近、防衛費増大に対する賛成、反対の議論が急速に高まっている。なかには、開戦前夜のような空気を煽る人々もおり、冷静で合理的な意見の交換を望みたいところだ。

よく考えると、今の世界と日本に、戦争する余裕などあるのだろうか。このまま地球温暖化等の環境破壊が続けば、世界中の国は、沈みゆく船に乗り合わせた運命共同体となる。2021年の世界の軍事費は、約2兆ドル。日本円で200兆円を大きく超える。今や、地球規模でも国内的にもひどい貧困格差も含めて、十分に対策が可能だ。

また、これだけグローバルに経済の相互依存が高まっている中で、戦争など出来るのだろうか。近年とみに対抗すべき国として挙げられることの多い中国は、日本の最大の貿易相手国であり、輸出入総額のほぼ4分の1、年間30兆円以上を占めている。

現在のロシアもそうであるように、もう戦争が国益となる時代は終わっている。そして、この半世紀、世界最大の軍事費を使ってきたアメリカでさえ、第二次世界大戦後、「勝った」と言える戦争は、ほぼ唯一湾岸戦争だけという歴史的事実がある。戦争を必要としているのは、限られた権力者と軍需産業だけなのだ。

結局のところ、戦争は、相手を犠牲にして自らが栄える収奪の手段と言えよう。地球も地域も循環型社会に向かうことが事実上義務付けられる21世紀、富や資源を一方通行させる解決はあり得ない。世界中で続けられてきた特定の資源や作物、生物を集中的に奪い取るモノカルチャー経済も、生態系の多様さに対する「戦争」とも言うべきものだ。そこに長期的な持続可能性は生まれない。

それぞれの地域が他地域の犠牲にならない自治、身近な地域を出発点とした重層的な循環、そして地域内と地域同士の共生が、人間も自然も含めた平和の道だ。