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北海道新幹線が運ぶ夢

印刷用ページを表示する 掲載日:2018年2月22日

北海道木古内町長 顔写真北海道木古内町長 大森 伊佐緒

木古内町は、北海道の最南端にある渡島半島に位置し、海岸線からは函館山や青森県下北半島、津軽半島が望め、春になると芝桜を始めとする様々な花が咲き誇ります。また、冬となる一月には厳冬の津軽海峡の海で、四人の若者が神社のご神体を清める百八十年以上続く神事「みそぎ祭」が行われるなど自然豊かな歴史ある町です。

そんな人口四千四百人ほどの穏やかな木古内町に、平成二十八年三月二十六日、北海道新幹線木古内駅が開業し、町中たいへんな賑わいとなり、マスコミにも大いに注目されることとなりました。

しかし、これはただ新幹線が開業したという目新しさだけで木古内町が注目された訳ではありません。町では、新幹線木古内駅開業決定時から新幹線を活用したまちづくりに向けて戦略・計画を練り、商工会などと連携して道の駅設置や駅前周辺整備を行ったほか、木古内町を含む道南西部地区9町及び地域の交通事業者などと連携を図り、新幹線を活用した広域観光PRを行った結果、道南の小さな町に大勢の方が訪れるという目に見える効果があったからだと思います。

駅前通りの電線地中化や、通りに面した商店街の景観統一を行った事業では、まちづくり情報交流協議会の「まちづくり情報交流大賞」を受賞したほか、今年一月に開業二周年を迎えた道の駅「みそぎの郷きこない」は、昨年十一月に来館者百万人を達成することができました。

道の駅では、様々な工夫を行っています。広域観光交流センターとしての機能も持たせていることから、物販コーナーでは当町の特産品ばかりでなく、周辺自治体や青森県の特産品も販売することで各地域の情報を発信しています。

また、館内に常勤の「観光コンシェルジュ」二名を配置し、連携している道南西部地区の『9町のことなら何でも知っている』コンシェルジュとして、観光案内や交通情報の提供、当地域での旅の過ごし方などの提案業務を行っています。

観光コンシェルジュの養成は、総務省の地域おこし協力隊の制度を活用して新幹線開業の三年も前から進めてまいりました。各地に長期間滞在し、各地域の観光資源や食、文化などについてみっちりと学んでもらいました。

その他にも、女性の意見を取り入れ、鏡台や照明の位置に配慮したパウダールームや授乳室のあるトイレ、無料コインロッカー、親子で寛ぐことのできる遊具のある広場、ミニイベントなどが行える多目的ホールなど、来館者に快適に過ごしてもらうための様々な工夫を凝らしています。館内には、木古内町観光大使で、世界の料理人千人の一人に選ばれた「奥田政行シェフ」監修による地元食材を使った料理が大評判のイタリアンレストランもありますので、ぜひ新幹線に乗って当町の道の駅へ遊びに来てください。

このように町に明るい変化をもたらした北海道新幹線ですが、私自身、新幹線との不思議な縁を感じています。

私は最初、富士銀行(現みずほ銀行)に勤めておりましたが、建設業を営んでいた父が病気となったため、その跡を継いで青函トンネルの建設工事に携わることとなりました。そこで昭和六十年のトンネル本坑貫通に立ち会いました。発破により北海道と本州が繋がり、そのとき本州側から流れてきた風が顔に触れた感触を今でも忘れることができません。しかし、残念ながらトンネルが完成しても、すぐに新幹線が走ることはありませんでした。

その後、青函トンネル開通から三十年という月日が経った頃、今度は木古内町長として、北海道新幹線木古内駅開業に向けた取組に携わることとなったのです。

そのため、夢であった北海道新幹線が多くの人に愛され、広く永く利用されるよう、また、周辺の自治体にもその良い影響が及ぶよう心を砕いて事業を進めてまいりました。そして、今後は、新幹線札幌延伸を視野に、沿線自治体がそれぞれの魅力を国内外に発揮できる取組をと考えております。

木古内町においては、平成三十一年度に函館・江差自動車道木古内ICが開通するほか、平成三十二年度には函館新外環状道路開通により函館空港ICと繋がり、有名な観光都市函館が格段に近くなります。

これにより、木古内町は、鉄道、陸路、空路が活用できる道南の交通ハブ拠点となることから、新幹線と陸路、新幹線と空路など有機的な交通網を生かした観光や産業振興に取り組み、「夢ある新幹線、夢ある木古内町」を町民とともに実現したいと思います。