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『いちご煮』と『階上早生そば』のふるさと

印刷用ページを表示する 掲載日:2017年11月24日

青森県階上町長 浜谷 豊美青森県階上町長 浜谷 豊美

階上町は、東は三陸復興国立公園の一角をなす延長五・五㎞にわたる海岸線をもって太平洋を望み、北・西は中核市の八戸市、南は臥牛山とも呼ばれる標高七三九・六mの階上岳を越えて岩手県洋野町に隣接した県境の町で、階上岳と階上海岸をはじめとした美しい自然資源に恵まれています。

当町は青森県最東南端に位置することから、県内で最初に朝日が昇る「光(ひかり)生(な)す町」と謳っています。太平洋に面していますが、砂浜は少なく、岩礁地帯が多くみられることから、アワビやウニ、ワカメやフノリなどの海藻類をはじめとした磯資源が豊富です。この特産のアワビとウニを贅沢に使った潮汁である「いちご煮」という料理名は、一度は耳にされたことがあるかもしれません。乳白色の出汁に沈むウニが、朝もやに霞む野いちごに見えるということから「いちご煮」と名付けられたと言われています。

また、県内で唯一奨励品種に採用されている「階上早生」というそばがあります。「階上」と町名が名付けられていることから「階上早生階上そば」として商標登録しました。その拠点施設として、閉校した小学校をそばの生産・加工・販売をする「わっせ交流センター」として改修し、六次産業化を目指し取り組んでおります。最近では乾麺のほか、そば焼酎「早生のめぐみ」も商品化され、そばの香りがふわりと香る爽やかな焼酎として評判です。

さて、私は階上町に生まれ大学卒業後、県農業改良普及員として務めました。その間、カリフォルニア州に派遣され、一年間の農業研修の機会に恵まれました。

帰国後は、アメリカでの経験を職務に生かそうと意気込んでいましたが、父親の急逝で退職し、帰郷することになりました。少しでもふるさとに貢献したいとの思いから、三十歳で町議会議員になり、五期目途中の平成十七年から町長を務め、現在三期目です。

何より忘れる事が出来ないのは、平成二十三年三月十一日に発生し、未曾有の大災害をもたらした「東日本大震災」です。六年半が経過し、甚大な被害を受けた当町も、震災前の活気を取り戻し始めています。

あの悲惨な状況を目の当たりにし、地域の方々が危機感を持って災害に備えられる町づくりを目指し、また、大震災を風化させることなく教訓をしっかりと後世に引き継いでいく責任があるものと考えています。

また、今年二月一日に「元気はつらつ 健康な町 階上町」に向けた健康宣言を行いました。私は、宣言することが目的ではないとの考えから、町民の健康状態に関する基礎データの調査や、健康知識の周知などの準備を万全に整え、約三年間の準備期間を設けました。具体的には、成果を数値化し「見える化」することで意識改革を促すという方法です。尿中塩分濃度計・活動量計・血圧計の三つの機器を「三種の神器」と名付け、私を含め町三役、全課長、町議会の全議員の方々がモニターとなりデータを測定し、その後は希望者に貸出しを拡大しました。そして、測定するだけではなく、「はしかみおいしい健康レシピ」により、町内産品を中心に春夏秋冬の減塩メニューを作成し、かるしお(減塩)を推進するなど、町全体の機運を高め、宣言日を迎えました。健康宣言してからが始まりです。町民と町が協力をして健康づくりを行う事で、病気の予防となり、健康寿命が少しずつでも延びて行くことが目標です。

町の主役は町民です。そして、町の役目は町民が安心して暮らせるよう環境づくりをし、バックアップを徹底することです。環境が整ったら実行するのは町民です。階上町では、町民の多くの皆さんに町づくりについて真剣に考えていただいています。平成三十年度から始まる「第二次協働のまちづくり地区計画」によって、町民一人一人の幸福感が高まり、さらなる魅力あふれる階上町を目指して町民とともに歩んで行きたいと思います。