鹿児島県南大隅町長 森田 俊彦
南大隅町は、鹿児島県大隅半島の最南端に位置し、本土最南端である佐多岬を有しています。東から南側は太平洋、西側は鹿児島湾から東シナ海に面しており、三方を海に囲まれた半島の先端の町で、面積は213.57平方キロメートルです。
温暖な気候を活かした亜熱帯性の果実栽培や野菜栽培、潮流に恵まれた良好な漁場を活かした養殖漁業や定置網漁業、畜産業などが展開されており町の基幹産業となっています。
今年9月には宮城県で開催された全国和牛能力共進会に本町の「佐多牛」も出場し、鹿児島県の総合優勝に大きく貢献してくれました。
また、5年越しの挑戦が実を結び、露地栽培での「アボカド」が今季、待望の出荷を迎えました。
一方、観光産業においては昭和39年、企業が佐多岬を開発し岬に通じる有料道路を開通させ、展望所やレストランを建設しました。最盛期の昭和40年代には、新婚旅行者など約25万人が訪れていましたが、平成22年には3万3千人まで落ち込み、平成24年には佐多岬の観光事業から企業が撤退し町が企業から土地を購入いたしました。
その後、佐多岬公園を無料化した上で、環境省と鹿児島県、本町が役割分担を決め、佐多岬観光の再起に向けた展望台の建替えや遊歩道等の整備事業を実施し、平成30年末には完了する予定です。
本町の人口は、昭和30年には2万5千人近くいましたが、その後人口減少が続き、平成27年に実施された国勢調査では7,452 人となり、65歳以上の高齢者の比率は45.6%と県内で最も高く、15歳未満の比率は9.5%と県内で最も低くなっています。
一口に「人口減少に歯止めを」といっても様々なアプローチがあろうかと思いますが、私は第一に「経済基盤の確立」を掲げます。生産年齢といわれる働き手の世代がこの町で生活していけるような、また就労世代がこの町での生活設計が描けるような経済環境を創出することが「この町に暮らしてゆける」「この町に住んでみよう」と定住を誘引し、それによって人口減少に歯止めをかけ、高齢化率の上昇を緩和する一番の戦略だと思います。
そこで今取り組むべきは「観光の振興」だと考えています。本町の観光資源である佐多岬、そして、急激に注目を集めている秘境の地「雄川の滝」などの整備が平成30年度には完成します。
さらにNHK大河ドラマ「西郷どん」が平成30年1月から放映されます。西南戦争の引き金となった私学生による「火薬・弾薬庫襲撃事件」の知らせを、西郷は本町の宿で聞き「ちょっ、しもた」と言って鹿児島に帰り挙兵されたそうです。その宿は現存しており、そのシーンがどのように放映されるのか楽しみでもあります。
これらの好機を最大限に活かし、本町の観光産業が活性化するよう町づくりを進めているところです。
大勢の方に来町していただき、本町の山の幸、海の幸を堪能していただきたい。そのために、町としてどのような取組を進めていくべきか。交流人口の増加に伴う農林水産物の需要の増加、新たなビジネスチャンスの創出などによる町の活性化は当然のことながら、その先にあるものこそが、私の目指す町づくりです。
多くの方が訪れたい、さらには移住したいと思える町とは、住んでいる人から見れば、「この町で生活できて幸せだ」と思える町だろうと思います。
私は「観光の振興」とは「我が町に暮らす人々が幸せを感じられる町づくり」でもあるという信念のもと、南大隅町の町づくりに挑戦していく所存です。