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20億年の時空を超えて

印刷用ページを表示する 掲載日:2017年9月4日

岐阜県町村会長・七宗町長 井戸 敬二

 

七宗町というとまず地名に対する読み方が話題となることが多々あります。県外の方から役場に電話がある場合、一般的には「しちそう」と発音される方が多く、「ひちそう」と職員が言い直すやりとりを何回か耳にしています。名刺交換の際にもよくある話です。

かの有名な京都の七条通は「しちじょうどおり」というように、「ひ」ではなく「し」が一般的であり、当町の読み方は、全国にはいわゆる難読地名がたくさんありますが、その一つの自治体に数えられています。 

さて、七宗町は岐阜県のほぼ中央に位置し、県都岐阜市まで約45㎞、名古屋市までは約59㎞、天下の名泉下呂温泉までは約50㎞の距離にあって、東西・南北約12㎞の広がりをもち、面積は90.47平方キロメートルあります。

町域の90.3%は標高200~700mの山林が占め、平地は極めて少なく町内を流れる飛騨川・神渕川及びこれらの支流沿いに農地や宅地が点在する状況となっています。

人口は、岐阜県で三番目に少ない約4,000人で、この10年間で700人あまりが減少し、高齢化率は43%と人口減少と少子高齢化対策が喫緊の課題となっています。

この地域は江戸時代から尾張藩に属し、飛騨川の水運を使い檜木、杉の木などの木材が産出され、町では江戸時代から林業や農耕作業に利用する鍛冶などの産業が盛んでしたが、昭和30年代後半からは工業化の波に徐々に飲み込まれ、第一次産業は衰退し、現在では近郊の美濃加茂市、可児市を中心とする製造業などへ就業する住民が増えてきました。

そんな小さな町、七宗町にも誇れるものがあります。それは、昭和45年3月28日に当時名古屋大学大学院生の足立守氏(現 名古屋大学特任教授)によって飛騨川の河床から発見された「上麻生礫岩(かみあそうれきがん)」の中に含まれる20億年前の日本最古の石(花崗片麻岩)です。

この石をPRするため平成8年に、町の玄関口にある国道41号線沿いに「日本最古の石博物館」が建設され、隣接する道の駅や物産館と併せて年間22万人の観光客が訪れています。

この博物館には日本最古の石だけでなく、カナダで発見された約40億年前の地球最古の岩石や35億年前のオーストラリアのチャート、太古の地球上に酸素を大量に供給したと言われるストロマトライトの化石など学術的に大変貴重なものが展示されており、先カンブリア時代をテーマにした世界で唯一の博物館と言われています。

また、この地域は飛騨木曽川国定公園に指定されており、特に当町から隣接する白川町までの間、飛騨川上流12㎞は飛水峡(ひすいきょう)と呼ばれ、日本の地質百選にも選ばれいています。

飛水峡は、国の天然記念物の甌穴群(河床の岩盤がまるく削られ穴があいたもの(甌穴)が数多く見られる。)の他、変化に富んだその地形が神秘的な雰囲気を醸しだし、訪れる人を楽しませています。

このように悠久の時を感じる七宗町に、ぜひ一度おいでください。