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小さな町だからこそ

印刷用ページを表示する 掲載日:2017年1月9日

島根県川本町長 三宅 実

 

川本町は、島根県のオヘソ(ほぼ中央)に位置し、県内本土側で唯一、単独町政を続けており、昨年10月、昭和の合併60周年を迎えたところです。かつては、官公庁や民間企業の出先が集中した郡都として人口1万人を超えた町でしたが、現在は3,450人、高齢化率44%という超高齢化社会を迎えようとしている日本の縮図のような中山間の町です。

市町村合併をしなかったことで特例債の恩恵には預かることがありませんでしたが、よかったと思えることは何点かあります。危機感を共有して絆が深まったこと、町民が自主的な活動の必要性に目覚め、集落内の助け合いの精神が強まったこと、つまり本町の強みとして、一人ひとりの存在感が大きく、町民皆の顔が見える温かい関係がベースにあるということです。

ブータンのワンチュク国王が来日され、国会で演説された際の、「人間の幸せは心の豊かさにある」という国民総幸福の哲学に深く共感しました。経済中心に追い求めていた私たちが知らず知らず忘れていたもの、精神的な豊かさを大切にして皆がHAPPYになる「一人は万人のために、万人は一人のために」という相互扶助の精神を根底においた真に豊かな共生社会をつくっていきたい。小さな町でも、そこに住む一人ひとりが日々幸せを感じ、自尊心をもって豊かに生活することが何よりも大切と考えて、行政面でも思いやりのある対応を心がけております。

地方創生が叫ばれる昨今、自立を目指し、人口減少への歯止めを図ろうとさまざまな取組を行っております。本町の平成27年度の社会増減は、若者定住住宅や住まいづくり応援事業等が功を奏して新築改築ラッシュとなり、県下で一番の増加率に転じました。しばらくは自然減が続きますが、2060年には目標人口2,500人とし、その後は安定するという予測をたてております。

こうした中、静岡県富士市に本社を置く健康食品のOEM製造会社で世界トップレベルの技術力を誇る企業の進出が決定しました。2年後に50人規模で操業開始し早い時期に200人規模になる計画であります。本町にとりまして、55年ぶりの企業進出であり、千載一遇のチャンスと捉え、町の命運をかけて成功させなければならないと考えております。

川本町は昭和60年に「音楽の町」を宣言し、「緑にこだます音楽の里」をまちづくりのテーマとして歩んできました。

その背景には、島根中央高校の前身である川本高校吹奏楽部の活躍があります。東京オリンピックが開催された昭和39年を皮切りに5回にわたり全国優勝に輝いています。このことは町民の大きな誇りであり、高校は町のシンボルとなっています。

平成28年度の島根中央高校の入学者は48校の中学校から定員どおりの90人で、この内県外からの入学者が34人となっています。このような生徒の出身校の構成も本校の特色となってきたところです。

本町が町ぐるみで取り組んでいる県外入学生のまち親制度や高校生と町民の相互の交流など先進的な取組に視察も多くなっています。

また、今年度は川本中学校と島根中央高校がアベックで、第22回日本管楽合奏コンテスト全国大会へ島根県から2校だけ出場しました。まさに音楽の町の復活であります。

全国的に川本のエゴマが注目され、健康をテーマとした取組や工場誘致との相乗効果も狙っていきたいところです。

また、町の正面に立つ仙岩寺山の頂上付近では、平成26年10月にボランティアを募って植栽した山桜1,000本のほとんどが根付いています。花が咲き誇るまでにはまだ年数はかかるとのことですが、町内から眺める仙岩寺山周辺を本町自慢の宝として、春は山桜、夏は新緑、秋はモミジと銀杏、冬は雪景色と、四季を通じて壮大で鮮やかな屏風を皆で造り上げたいと考えております。

小さな町だからこそできる「オール川本」の大きな強みを発揮して、魅力あるまちを創り、皆が幸せを実感できれば最高だと思う今日このごろです。

「夢に向かって 前進 前進!」