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「子育て日本一」

印刷用ページを表示する 掲載日:2016年5月30日

山口県和木町長 米本 正明

 

最近、新聞紙上などで「子育て日本一」を掲げる市町村をよく目にしています。これは人口減少を抑止するため、多くの自治体が子育て施策に力を注いでいる証拠だと思います。

和木町は、山口県の最東端の町で、総面積10.58k㎡の内、山林と工場地帯が75%を占める、人口6,500人の県下で最も小さな町です。

以前の和木村(昭和48年に町制施行)は農業と海苔の村でしたが、戦後、旧陸軍燃料廠跡地に日本で最初の石油コンビナートが形成されて以降、企業城下町として大きく発展して参りました。

そして和木町では当時の豊かな税収に支えられ、これまで様々な高レベルの住民サービスを提供して参りましたが、子育てに関しても昭和27年頃から完全給食の無料化や、 学用品などの購入費の助成等を行い、近隣市町村から羨ましがられる程に子育てに力を入れてきたところです。

しかし、近年の世界不況の影響や石油業界の低迷などにより企業税収が激減した中においても、手厚い住民サービスは維持したままと、苦しい財政運営を余儀なくされているところです。

加えて財政が豊かな時代、早くに整備した下水道や各施設の老朽化に起因する大きな事故や改築などが重なり、苦しさを増している状況です。

そんな中、他市町村でも和木町に負けない子育て施策を打ち出しているところも多く、何の特産も資源も土地も無いわが町にとっては唯一のアドバンテージが徐々に失われているのではないかと、 焦りを募らせているところです。

しかしながら和木町は山口県内でも人口減少率が低く、合計特殊出生率は1.77と県下最高をマークしています。また3年連続の自然増であり、JR和木駅の開業により交通の利便性が向上したことや、 一昨年の豪雨災害で転居された方が帰ってこられたことなどもあって、直近一年では僅かではありますが社会増となってきております。 

新聞などでも大きく取り上げられ、大変うれしく思っていますが、この社会増をなんとか続けて行こうと努力しているところです。

現在は幼、小、中の給食費の無料化を継続し、中学3年生までの医療費の無料化、中学生20名を2週間、オーストラリアにホームステイさせ、新たに、高校生の語学留学も実施しております。

また、幼稚園の保育料は5千円としており、小、中、高生を対象とした英検、数検、漢検の受験料を全額助成しているところです。

加えて、出産祝い金を1人1万円だったところを、2子目は3万円、3子以降は5万円と拡充致しました。ユニークなのは中3、高3の受験生にはインフルエンザの予防接種の全額助成をしていることです。

これらの施策を続けてきたお蔭で、過去5年、定住人口は緩やかに減少していますが、「増田レポート」にある896の消滅可能性自治体には入っておらず、 人口減少率も特殊出生率も良い成績を頂いていますが、ここは「兜の緒を締めなおせ」と自身に言い聞かせているところです。

しかしこの程度では、皆さんが必死に「子育て日本一」を目指し努力されている中ではすぐに追い着き、追い越されると思いますし、まだまだ先に進まれている「本当の日本一」の自治体もおられると思います。

これからは「本当の子育て日本一」に追いつくべく、必要な財源を確保しつつ、高校3年生までの医療費の無料化や、子育て施策の拡充、各種教育制度・施設の充実に加え、 結婚・出産などの施策を充実させていきたいと考えております。

しかしこのような和木町の魅力を多くの方に知って頂かなければ人口増には結びついてこないと思います。そのためのPRが最も重要と考えており、 SNSなどあらゆる手段を通じて情報発信していきたいと思っております。加えてわが町の最大の弱点であります宅地不足解消などの施策に力を入れると共に、安心・安全な町、 アートのある少しおしゃれな町を目指して、住みよい町づくりを進めて参りたいと考えております。