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心休まる出湯の街

印刷用ページを表示する 掲載日:2015年8月3日

静岡県東伊豆町長 太田 長八

 

東伊豆町は、伊豆半島東海岸の中央部に位置し、東南は相模灘に面し、東北に伊東市、南西に河津町、また、天城連山の万二郎岳・万三郎岳を境に伊豆市と接した立地となっています。東西15.04㎞、 南北13.78㎞、総面積は77.83k㎡で、山地や丘陵地が海岸近くまで迫っており、この丘陵地により6つの地域が形成され、それぞれに特色のある温泉場を構えています。本町の人口は、1万3千人余りで、 基幹産業である第三次産業の従事者が7割以上を占めており、伊豆半島でも有数の観光地として、年間80万人を超える来訪者で賑わっています。

本町は、昭和34年に稲取町と城東村が合併して誕生した町で、現在は、稲取地区に役場本所、熱川地区に支所を配置し、地域に密着した住民サービスを行っています。

私は、本町の稲取地区で生まれ、現在、熱川地区で暮らしており、この町に人一倍の深い愛着を持っています。幼少期を過ごした稲取地区は、古くから漁業が盛んで、マグロをはじめ、サンマやイカ、 貝類などの漁で生計を立てている方が多かったと記憶しています。また、模範村として全国にその名を知らしめた郷土の偉人「田村又吉翁」が広めたといわれる柑橘類や天草など、 第一次産業における特産品は多岐にわたります。現在は、農産物ではニューサマーオレンジやカーネーション栽培が、漁業では金目鯛や伊勢海老漁が中心となっており、 特に金目鯛については、「稲取キンメ」として特許庁の地域団体商標登録がされ、地域ブランドとして注目を浴びています。

一方、熱川地区は、趣の異なる5つの温泉場を抱え、街中に湯煙が立ち上る豊富な温泉が売り物で、眼前に広がる伊豆七島を眺めながら浸かる温泉は格別なものがあります。また、熱川海岸には町で唯一、 砂浜の海水浴場があり、夏場は大勢の海水浴客で賑わいます。また、農地整備をはじめ、かんがい排水整備、農村公園の整備がなされ、周辺にはミカン狩りやイチゴ狩りなどの観光農園が点在するなど、 農業生産活動も活発に行われています。

さて、近年の地方を取り巻く環境は大変厳しく、景気に敏感な観光産業を基幹産業とする当町では、東日本大震災発生以降、入湯税に基づく入湯客数の落ち込みが続いておりましたが、 景気の緩やかな回復基調を受け、長年続いたデフレからようやく抜け出そうとしている過程の中で、平成26年度は2年ぶりに前年を上回る84万人の入湯客数を記録しました。

この流れをさらに加速させ、“また訪れたい町”としての魅力を高めるため、新たな観光資源の発掘や地域ブランドの磨き上げなど、ニューツーリズムへの対応を図っているところです。

伊豆半島では、広域的な観光連携のため、平成27年度から伊豆半島グランドデザインを推進する美しい伊豆創造センターが設立され、4月より職員を派遣しています。平成28年度には、 伊豆半島ジオパーク推進協議会が統合される運びで、伊豆半島ジオパークの世界認定に向けて各地域に点在するビジターセンターやジオガイドの連携した取り組みが進められるとともに、 中央拠点施設の整備が図られ、官民一体でエリア内の地域資源を磨き上げるとともに、着地型旅行商品として国内外へピーアールしていくこととなります。

当町でも、稲取地区の山間部に広がるジオサイト、稲取細野高原の雄大なススキの草原を潜在的な観光資源として活用し、魅力あるまちづくりに取り組んでおりますが、 今後も美しい伊豆創造センター及び伊豆半島ジオパーク推進協議会と連携を図りながら、町の活性化につなげるべく、一層の取り組みを進めていきたいと考えています。

また、長期に及ぶ円安基調に加えビザ発給要件の緩和、さらに2020年東京オリンピック・パラリンピック開催などにより、外国人旅行者の大幅な増加が見込まれることから、 インバウンド対策の強化とともに外国人旅行者の受入環境整備を図る必要があり、その整備に力を注いでいるところです。

恵まれた自然環境と豊富な特産品に加え、町が一体となり、真心のこもったおもてなしの精神で観光客を迎え、四季を通じ心休まる出湯の街として、訪れる方々の思い出に深く刻まれるよう、 その基盤強化に全力を注いでいく所存です。