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川とともに生きるまちづくり

印刷用ページを表示する 掲載日:2014年12月22日

高知県町村会長 高知県安田町長 有岡 正幹

 

安田町は、高知県の東部に位置する人口3千人足らずの小さな町で、三方を四国山脈の急峻な山岳に囲まれ、南は黒潮あらう太平洋に面し、町の中央部を南北に安田川が貫流する、 自然豊かな清流のまちです。

安田川下流の平野部は、温暖な気候と自然環境に恵まれ、蔬菜園芸発祥の地として発展し、ナスやオクラなどが盛んに栽培され、上流の中山間部では、ユズや自然薯の栽培も行われるなど、 農業のまちとして栄えてきました。

かつては、日本三大美林の一つにも数えられる魚梁瀬杉を使った製材業も盛んでしたが、天然林の枯渇などによって衰退し、現在では、木材を運搬した森林鉄道の遺構が町内各所に点在しています。 隧道や橋梁など当時の面影を留めた数々の遺構は歴史的・文化的な評価も高く、国の重要文化財に指定されています。

町の自慢である安田川は、ダムのない手つかずの自然が残る清流として知られ、古くから流域に広がる豊かな土壌を潤し、町の基幹産業である農業を脈々と支えてきました。 ミネラルをバランス良く含んだ伏流水は、全国的にも名高い「土佐鶴」と「南」、2つの銘酒を醸しています。

また、水の流れは急流で透明度が高く、良質な苔が繁茂しているため、清流のシンボルである天然鮎は身が締まり、味・香りともに素晴らしく、 全国規模で開催されている「清流めぐり利き鮎会」では、数々の有名河川を抑え、2度のグランプリを受賞するなど、その味は折り紙つきです。

毎年、県内外から大勢の太公望が集い、その腕前を競い合う憧れの川でもあり、私たちは胸を張って「日本一美味い鮎の棲む安田川」と言っています。

清流安田川に象徴される本町の自然は、今日まで、町の産業を育み人々の暮らしや文化の骨格を築いてきた重要な財産であり、私たちには、先人が遺してくれた自然やその恵みを活かして、 わが町の存在価値を後世まで高めていく責務があります。

これまでも、農産物などの地場産品販売センター「輝るぽーと安田」や、地元の食材を使ったフランス料理を提供する「レストラン ラポール」といった町の総合交流拠点施設を整備し、 地産地消による産業振興、町の情報発信、町内外の交流人口の拡大を図ってきました。また、マンゴーやブルーベリーなどの新興作物栽培の普及を図りながら、 それらを使ったスイーツの製造販売を行う「安田(あんた)と夢ファクトリー キララ」をオープンし、新たな安田町ブランドである「マンゴー大福」の開発・販売促進を行うなど、 6次産業化による産業の創出や地産外商の取り組みも進めているところです。

さらに、幕末の英雄、坂本龍馬を顕彰する高知県立坂本龍馬記念館の連携館である「安田まちなみ交流館 和(なごみ)」において、幕末維新の充実した企画展の開催などを通じ、 郷土が誇る歴史や豊かな文化を身近に実感できる環境づくりにも努めています。

このように「人々が集い、交流するところには笑顔があふれ、まちに活力を生み出す」という想いをもって、全力でまちづくりに取り組んでおりますが、現在、わが国では、 人口減少や高齢化が急速に進み、私たち町村を取り巻く環境は極めて厳しい状況におかれています。

国において、こうした人口減少に歯止めをかけ、東京圏への人口集中を是正し、活力ある日本社会を将来にわたって維持していくための、地方創生の取り組みが本格化されようとしている中、 私たちも、これまで以上に斬新かつ柔軟な発想と行動力をもって、町民の大切な財産である清流・安田川をはじめとする自然環境を活かし、世代を超えて大輪の花を咲かせ、大きな実を結び、 皆が夢をもてるようなまちづくりを進めていくことが重要であると考えています。

海・山・川の自然に恵まれた絶好のロケーションは、その夢を実現させることが充分に可能なものであると自負しており、これからも、安全・安心で活気のある協働のまちづくりを目指し、 町民と心をひとつにして、川とともに生きる未来の安田町を創造していきたいと思っています。