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「美しい 楽しい 美味しい」まちづくり

印刷用ページを表示する 掲載日:2014年10月20日

北海道美瑛町長 浜田 哲

 

トラクターの大きなエンジン音とともに、農作物の収穫は全盛期を迎え、その収穫を終えた「丘」の背景には、冠雪を間近に控えた日本百名山に数えられる秀峰、十勝岳の雄々しい姿を望むことができます。

十勝岳の麓にある白金温泉近くにできた「青い池」、その裾野に広がるなだらかな丘とそのアクセントとなるように立つ樹木。小麦や馬鈴薯、豆類といった美瑛町を代表する農作物が、 さまざまなパッチワークの農村景観をつくりだし、国の内外から「丘のまち」へ150万人近くの観光客が訪れます。

この起伏に富んだ大地は、先人から脈々と受け継がれてきた豊沃な耕地として今の姿を現わし、なだらかな曲線が作り出す美しい耕作地と勇壮な山岳景観の融合が地域資源であり、 この資源は人の生業である農業によって作られ、まさに美瑛町は農業を基幹として、商工業や観光業が互いに連携し合うことで町の発展につながっています。

なだらかな丘を吹き抜ける風、爽やかな空気や景色、空を遮る建物はなく都会にはない十分すぎる自然がここにはあり、このまちを形容すると美しいまちが最もふさわしい言葉ではないかと感じます。 本町では、美しいまちづくりをさらに進めるため、2005年「日本で最も美しい村」連合を提唱し、現在、全国46町村6地域、サポーター企業63社の仲間とともに、四季折々の風土の中で、 人々の暮らしとともに作られてきた素晴らしい伝統や景観といった地域資源を活かした美しいまちづくりに取り組んでいます。

今、まちづくりを進めるに当たり、町民がいつまでもこのまちに住み続けたい、そして町民以外の方々にもこの美しいまちの魅力を感じてもらうために、子供から高齢者が集い、 賑わいのある市街地となるよう、コミュニティ施設の整備や駅前から十勝岳連峰へ向かって伸びる目抜き通りを、美瑛町の玄関口にふさわしい遊びや文化をテーマとした質の高い空間への再整備を行うなど、 町民をはじめとして美瑛町を訪れる方々にも「楽しいまちづくり」を推進しています。

一方ではライフスタイルが多様化する現代、「食」に対する安全・安心志向が高まり、農業がまちづくりの柱である美瑛町では、農業者と消費者を結び付ける「地産地消」の取り組みをさらに進めるため、 美瑛の「食」を楽しむことをテーマとしたまちづくりを進めています。

「食」にはさまざまなまちづくりの要素が含まれており、地域の歴史や文化、風土が「食」にあると考え、産業や観光、教育などさまざまな分野において「美味しいまちづくり」をテーマとした取り組みを進め、 今年4月には、廃校となった校舎を活用して、農業と食、観光との連携をコンセプトにフランス料理の提供やシェフの養成、 料理体験ができる「北瑛小麦の丘 体験交流施設 レストラン ビブレ」をオープンしました。また、 町民や民間の方々との協働により「カレーうどん」や「豚テキバーガー」といった、わがまちで穫れた野菜や豚肉などを使ったご当地グルメも登場し、まちづくりの一翼を担っています。

これからまちづくりを進めるうえで将来の姿を推測すると、少子高齢化社会に加え人口減少社会の到来など、自治体が行政運営を今と変わらず行うことは容易なことではなく、 地域の運営においても人材の減少は、間違いなく進んでいく厳しさに向き合っていくものと認識しています。

そんな将来展望にあっても、いつの時代になっても「丘のまち美瑛」が輝き続けるために、農業や商工業といった地域を支える力の源は「人」であり、 地域の豊かなつながりが貴重なまちづくりの財産であると考え、「人」を大切にし、「人」を育てる町をしっかりと創っていきたいと思います。

まちづくりは、国民の歴史と財産をつくる仕事だと思っています。大都市ではもはや失われてしまった美しい自然を守り、動植物との共生やすばらしい環境の保全を日本の国の未来への投資と考えながら、 町民のみなさんのたくさんの笑顔を見ることができる、「美しい 楽しい 美味しい」そんなまちづくりに取り組んでいきたいと思っています。