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限界集落の挑戦

印刷用ページを表示する 掲載日:2014年9月29日

限界集落の挑戦

熊本県多良木町長 松本 照彦

熊本県の南に位置し、宮崎県に接している多良木町は、町の中央を東西に日本三大急流の一つ球磨川が流れ、 熊本県の文化財の80%を有する球磨盆地の中にある面積165.86k㎡の80%を森林が占める町です。ご多分にもれず、人口減少、少子・高齢化が急速に進行している町です。

これまでの日本は、経済性、合理性が重要視、優先され、若者が都会へ都会へと出て行きました。これからは、心の豊かさや人と人との関わり、絆を求めて地方が注目され、 地方が再認識される時代になると思いますし、地方が活性化しないと日本は駄目になっていくのではないかと危機感を持ち危惧をしています。

町部から一山越えなければならない、流れる川は宮崎県の大淀川に注いでいます。そのような地域に「限界集落」と呼ばれている槻木地区があります。 この地区を本町の山間地域のモデルとして、熊本大学の徳野教授に調査をお願いして集落点検をしていただきました。結果、約90%の住民が「不便だがここに住み続けたい」との事。 子供が1人もいない、一番若い人で30才代が1人という、町内でも高齢化率が一番高い地区です。

何故若者が居ないか?働く場所がないからです。 大学生を含めた教授の住民全員に対する聞取り調査の結果報告は、①将来への不安「若い世代」が居ない、②定住意志「住み続けたい」という意志がある、③子供達が近くの町村に住んでいる。 との事から次の3つの選択肢を提示されました。

①集落の自然消滅、②集落の全体移転、③集落存続。これを再び地元の人達に問うた結果③の集落存続に向けて今一つ頑張ろうという事になりました。

そこで集落支援員を町外に求め、公募して夫婦と子供2人(6才、3才)の家族に決定しました。今年の春から新一年生として通うことになったので、7年間休校状態だった小学校を再開校しました。 地域に子供の声がこだまする明るさが戻ってきました。童話発表会のときは地区の老人会の皆さん30名が聞きにこられたそうです。また、 この夏休みにはたった1人の新一年生が朝6時半からのラジオ体操を各集落に出向き、お年寄りの方々と元気よく行っています。私も参加してその光景を見ましたが、明るさと活気を感じました。

学校再開が目的ではなく、若者がUターン、Iターンをしてくれる、雇用の場の創設が最大の目的です。

支援員を始め、全国から注目を浴びているので、いろんな方から問い合わせがあり、これが少しずつ実を結んでいくと「限界集落」も見直されると思っています。

集落支援員は、毎日各家庭を訪問し安否確認はもちろん、いろんな相談事に耳を傾け1年が過ぎましたが、人柄も手伝って地元住民の方々とも打ち解け合って受け入れられています。 支援員の人脈で月に一回、以前住んでいた福岡市に槻木地区の農林産物の販売に出かけてくれています。その産物の出荷者も回を追うごとに多くなっていますし、同行する人も自主的に手を上げて参加され、 やる気を実感しています。これも支援員の積極的な行動の一つだと考えています。更なる出荷者、出荷量の増加を期待しているところです。

これを機会に、いなかと都市部との人と人との交流にも発展していくのではないかと期待しています。

本町では光ファイバーを民間で敷設してもらいましたので、インターネットを利用し、自然豊かな地域で活動出来る個人、企業の方に来ていただければ大変ありがたいと思っております。

また和紙の原料である三椏(みつまた)の群生地もありますし、町有材も約2,000haあり、平成23年より毎年10ha程度を皆伐して植栽、育栽、間伐等の手入れをする雇用の場を作り、 後継者も育って来ています。もっともっと林産物を活用する事業に取り組み地球温暖化防止、環境保全に結びつけ、地元に還元出来るサイクルを作りたいと考えています。