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おいしい水と豊かな緑

印刷用ページを表示する 掲載日:2014年4月7日

神奈川県町村会長 神奈川県中井町長 尾上 信一

 

中井町は神奈川県の南西部、足柄上郡の東端に位置する町です。

都心からおよそ60㎞、東名高速道路を利用すれば約1時間で訪れることができます。肥沃な関東ローム層の土壌を活かした露地野菜や温暖な気候を利用した果樹類の生産も盛んで、 山の斜面にはミカン畑が点在しています。

平塚市、小田原市、秦野市、二宮町、大井町に接する、町域面積約20k㎡、人口約9,800名の町ですが、50社程の企業活動も盛んに行われ、農業と工業が調和する緑豊かな里山景観を維持する町で、 明治41年中村と井ノ口村が合併して中井村となり、昭和33年に町制を施行して、平成20年に「中井」誕生100年を迎えました。

≪道が町を変える≫

中井町は駅の無い町です。当然自家用車の保有台数も多く、自家用車以外では、唯一の公共交通手段である民間バスを利用して、隣接自治体にある駅からの通勤・通学手段がとられています。 そのような状況もあり、町の活性化に繋がる有益な土地利用が進んでいませんでしたが、昭和56年の東名高速道路秦野中井ICの開設以降、中井町は大きく変貌しました。 IC周辺の山林や農地約75haへ先端技術産業を集積する目的で、グリーンテクなかい開発事業を昭和63年から着手し、平成7年の計画地全体の竣工以降は、昼夜間人口も120%を超え、 町の財政基盤も整い、平成4年度からは20年間普通交付税の不交付団体となっていました。このように道が町を大きく変えたのです。

≪子育てしやすいまち≫

現在、我が国では経験したことのないスピードで少子高齢社会が進んでいます。私たちの町も同じで、平成6年の10,480人をピークに人口の減少化が進んでいます。 企業誘致による雇用機会の拡大も狙いとしていましたが、生産活動が海外にシフトする時代となり、パート職の雇用はあっても、若い人の雇用まではなかなか進んでいません。 交通機関の不便さも加わり、町外へ雇用の場を求めて転出する方もいることは誠に残念です。しかし、このような社会情勢においても、子どもたちが健やかに成長し、恵まれた環境で学び、 この町で働き、憩えるという未来の生活像を実現するため、子育ての支援として、中学卒業までの医療費の無料化を県内市町村に先駆けて実施し、今年の4月には、保育と幼児教育を併せて行い、 義務教育へのスムーズな移行ができるよう「認定こども園」を開設しました。また引き続き、情報教育や英語教育等教育環境の整備なども積極的に行っています。成果として、 子どもの数の増加までには至っていませんが、小さな町でもきらりと光る特徴のある対策が、いつしか功を奏するという信念を持っています。

≪おいしい水、豊かな緑を引き継ぐ≫

我が中井町で一番自慢できるものは何かと言われると「おいしい水」と即座に答えます。とりわけ、中井町に訪れる方からも冬は暖かく、夏は冷たいおいしい水を絶賛されます。 北に丹沢山系を望む大磯丘陵の一角に位置し、クヌギ、ナラなどの落葉樹が繁る丘陵地で、豊かな地下水が涵養されます。

地下水は一度汚れると元通りの状況に戻すことはできないと認識します。安全でおいしい水は、潤いのある町民の生活と企業の生産活動を支える源です。地下水の保全はもとより、 継続的な供給のため施設の維持管理には細心の注意を払っています。

将来に借金は残さず、豊かで安全な水と豊かな緑をしっかりと残すことが重要なことです。

地下水の流れには境界は無く、行政域を超えた地域や人々の意識と協力が必要となります。同じく、町政運営においても、町民生活の豊かさをより実感できるよう、 生活圏を重視した広域連携の取り組みを更に進め、「水と緑、人がきらめく 住んでみたいまち」を目指してまいります。