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夕陽のまちづくり

印刷用ページを表示する 掲載日:2014年2月3日更新

静岡県西伊豆町長  藤井 武彦

 

私の若いころ育った西伊豆町田子地区は、鰹漁で栄えた漁師町で賑わっていました。そこで昔から保存食として伝わってきた鰹を1本丸ごと塩漬けにして干した塩鰹が作られてきました。 塩鰹を「しょうがつお」と読み、縁起の良い食べ物として藁で飾り、正月には神棚にお供えします。地域の特色を生かしたまちづくりの方策を考え、地元が元気になるように、 その塩鰹を使った商品で地域をアピールしている団体もあります。

西伊豆町は、都心から約3時間、静岡県の東部、伊豆半島の西海岸のほぼ中央に位置し、西は駿河湾に面し、東は天城山系が連なる豊かな自然に囲まれた町です。国立公園・名勝に指定された海岸や島々、 奇岩を前景に水平線に沈む夕陽は非常に美しく、夕映えの美しい「夕陽のまち」として平成17年には、“夕陽日本一”宣言をしました。夕陽をみる会の開催や夕陽のビュースポット整備、 夕陽ボランティアによる案内など、夕陽をシンボルとした地域づくりを行っています。

夕陽のまちづくりを進めていく過程で、町内5地区において、地域の方々とそこに住む町職員が一緒になって、まちづくり協議会を立ち上げました。古い民家を利用して地場産品を販売したり、 干潟をきれいにして、以前は豊かであったアサリを復活させようと海岸整備を試みたり、遊休田を利用して健康食品のヤーコンを栽培してお茶や切干しなどの商品化に取り組んでいる地域もあります。 地区のリーダーとなる人材の掘り起こしと、まちづくりの輪が広まり、地域が活性化することを期待しています。

今、伊豆半島ではジオパークの認定に向けての取り組みが行われています。町内の堂ヶ島地区には、美しい絶景をつくり出している奇岩や断崖の岩肌に、噴火をくり返した海底火山の記憶が刻まれており、 伊豆半島最古の地層「枕状溶岩」などのジオサイトもあり、解説のための人材育成や環境整備を進めています。

三島由紀夫の小説の舞台にもなった、県の指定天然記念物の黄金崎は、風化した岩肌が黄褐色に変化し、夕陽を浴びると黄金色に輝き、とても神秘的です。 平成25年5月にできた展望デッキから黄金崎を見下ろすと、その姿はまるで、黄金の馬が水を飲んでいるようにも見え、ラッキーな人は遠くに富士山の姿をみることができます。

水平線に沈む壮麗な落日と温泉とともに、絶景を楽しみに、是非西伊豆町にお越しください。

今後の町の大きな課題の一つとして、過疎化、少子化、高齢化の進展による地域の活力の低下が挙げられます。町の高齢化率は40%を超えており、また、人口は、就労の場も少ないため、 都会への就職人口流出などにより急速に減少しております。これは当町に限った問題ではないと考えますが、町民福祉の実現を持続可能な形で展開するために、 子ども医療費の無料化年齢の引上げなどの子育て支援策を考えております。

また、地震防災対策ですが、東日本大震災を契機に町民の皆様方の関心は非常に高まっています。新たに防災専門委員会を発足させ、西伊豆町に合った防災対策、減災対策等について話し合い、 最善最適な防災対策は何かを、町民の皆様と一緒になって考え、進めていきたいと考えております。

観光産業の活性化や安心安全なまちづくりで住民の皆様が心豊かに生活できることを願っています。

無題

黄金崎(黄金の馬)