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「子育て日本一」を目指して

印刷用ページを表示する 掲載日:2013年9月23日

島根県町村会長 島根県邑南町長 石橋 良治

 

私のまちは子供を地域で育てる気持ちが強い。合計特殊出生率が2.07以上でないと少子化へ転ずると言われているが、邑南町では過去5年間の平均は2.06である。 全国平均が1.37、島根県平均が1.58なので子育てし易い環境であることは間違いない。

平成23年度から「子育て日本一」を目指して10年間の計画を立てた。現在の70人前後の出生者数を「10年後には毎年100人以上」としている。少子化のなかで大胆な目標である。 ここにきて町の中心部のみならず周辺地域でも子供(4才以下)の数がプラスに転じている。

まず心掛けたことは子育て世代の負担軽減である。第2子以降無条件で保育料無料、中学校3年生まで医療費無料を中心に種々な負担軽減を行っている。食育の観点から、 保育所の完全給食の実施もその一つである。

これら負担軽減の財源(10年分)として、「子育て基金」を積み立てるとともに、過疎ソフト事業をフル活用することで既に確保済みである。とにかく、行政と地域住民が協力し、 子供を大事にする姿勢を子育て世代にアピールしている。しかし大事なことは、単にサービス合戦に終わってはならないということである。これからは、何と言っても人づくりである。 子供の教育に投資を怠ってはならない。教育こそが未来を切り開く力である。

合併して9年たった今、初代の町長として厳しい財政状況のなかで町政運営にあたってきたが、一度も教育予算を削ったことはない。むしろ、全体の行財政改革を行うなかで教育予算を増やしている。 子供一人当たりの教育支援費は県内でもトップクラスと自負している。

例えば、町単で12名補助教員を採用し、学習・生活・複式の支援の観点から、各学校に配置し、また規模の大小に関わらず、全ての小中学校に学校図書司書を配置している。 (県の支援も有り。)お陰で学校図書館が見違えるように活発になり、貸し出し冊数も2倍近くに伸びている。そのことにより、調べ学習も定着してきた。少人数ではあるけれど、 一人一人の能力を最大限伸ばすことで、田舎の学校でも学力向上が図られることを証明したい。もちろん、ふるさと学習・郷土愛の教育を忘れてはならない。ちなみに、 人口1万1800人の小さなまちでありながら小学校8、中学校3、普通高校1、養護学校1、保育所9、公民館12と数が多い。

全国的には少子化の流れで統廃合が進むが、私はこれを良しとしない。統廃合が進むと、確実にその地域は衰退する。特に保育所と小学校はセットで守らなければならない。なぜなら、 保育所はその地域の子育ての拠点であり、小学校は地域の文化、郷土教育の拠点であるからだ。保育所と小学校はまさに地域にとって両輪であり、幸い「子供は地域の宝」とする文化が地域には残っている。

また、今年から各公民館を「地域学校」と称して、住民主体で子供を育てるプログラムを始めている。

私は行政の責務として、常々思っていることがある。それは、地域の資源・人をフル活用して、果敢に少子化へ挑戦することである。10年後の減少数を予測して縮小・締めるのではなく、 まずこの間に子供一人一人を大切に育てることで、地域に子育て世代を増やす、地域に子供を呼び戻す努力を必死に実行すべきである。大都市ではできなくても、 町村では重点的に思い切ったことができる施策があるはずだ。それが町村の強みであり、魅力となって輝いてくる。

これからも私は、子育て世代にアピールすることで、若者を呼び込み、U・Iターンを増加させ、子供の貧困や格差社会とは無縁な、恵まれた子育て環境・教育環境のなかで、 邑南町が持続可能なまちになるよう先頭に立っていく覚悟である。そのことで、少子化対策待ったなしの日本・OECD加盟国のなかで、教育費の支出が最低である日本の現状に警鐘を鳴らし、 風穴が開けられれば幸いである。