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輪中の町に生きる。住民の幸せを求めて

印刷用ページを表示する 掲載日:2013年7月22日

岐阜県輪之内町長 木野 隆之

 

岐阜県の南西部、揖斐・長良の両河川に囲まれた「輪中地帯」にある輪之内町は、その清流に育まれた豊かな自然、歴史に培われた風土を生かし、 輪中文化を受け継ぐ田園の町として発展してきました。面積は約22平方㎞、人口は約一万人、東海道新幹線・岐阜羽島駅から車で約10分程に位置する典型的な都市近郊農村地帯であります。

本町には厳しい自然環境や幾多の水害を克服し、今日の繁栄を築いてきた先人たちの英知と努力の歴史があります。いまを生きる私たちは、それを尊重しつつ着実な一歩を積み重ねていく責務があります。

近年は、徐々に町人口が増加しております。価値観の異なる町民の合意による新たなまちづくりが求められています。関係者がまちづくりに積極的に参画し、 議会及び行政とも情報を共有しつつ協働を実践してこそ、「住んでいて良かった、これからもずっと住み続けたいと実感できるまち」になるものと考えております。 平成22年3月に県下の町村では初めての「まちづくり基本条例」を町民協働の理念のもと制定し、その第一歩を踏み出しました。また、平成23年3月には男女共同参画条例を制定しましたが、 これらの条例の策定に当たっては町民からの公募による委員会を立ち上げ議論を重ねました。いわば手づくりの条例であり、その実効性に期待をしております。

平成19年12月には、地球温暖化対策、省資源化対策への取り組みとして県下で初めて大規模商業者、町民団体、当町との合意に基づきレジ袋の有料化を開始しました。 小さな町の一歩でしたが他市町村に大きな波及効果があったものと受けとめております。

また、豊かな自然環境を住民自らの手で守っていく機運を醸成するのも行政の責務であることから、平成21年12月には自然環境保全のシンボルとすべく、 絶滅危惧種の「カワバタモロコ」を保護する町条例を制定しました。過去においては広く濃尾平野の河川に生息していたカワバタモロコも現在では本町の一部で確認されるにとどまっているようです。 保護に関してはいろいろな考え方が有りますが、単独種を保護するためのおそらく全国的にも希な条例では無いかと思っています。余談になりますが、「自然豊かな住みよい町」を内外に発信するため、 いわゆる「ゆるキャラ」のかわばたくんともろこちゃんを作製し各地のイベントにデビューさせております。

安全で快適な生活環境整備も大切な課題でありますが、その一環として、町内全域を対象にFTTH方式の光ケーブル網を構築することとし、 平成23年4月から民設民営で行政が支援する形態で事業をスタートさせました。行政情報・防災情報・安全安心情報等を適時的確に提供できるようにコンテンツを充実させて行きたいと考えております。

すこし目を転じますが、平成25年4月から子育て支援策として高校生世代までの医療費無料化に踏み切りました。私の政治信条として便益と負担のバランスを重視しておりますので、 何でも無料化すれば良いとは考えておりません。しかし、各種負担が現役世代に偏りがちな現状を思うと、その負担を軽減しつつ将来の地域を担う人材の健やかな成長を願う施策の導入も、 今こそ必要と考えております。

人口減少の時代に入り、各地方自治体の住民ニーズへの対応は様々であります。財政の健全性を保持しながら、いかに説明責任を果たしつつ全体の施策水準を高めていくか課題山積であります。 地方の時代と言われながらも、残念なことに地方自治体のあり方について制度対応が追いついていないと感じます。現場を預かる我々が声を大にして主張しなければ、真の自主自立は成しえません。 日々、神経をすり減らしながらも決断をしていかなければなりません。本町は平成の大合併の流れのなかで自主独立の途を選びました。私自身は当時の判断に関与しておりませんが、 いまは住民がそれで良かったと実感する施策展開をすることが私の役割と受け止めております。

全ては町民のために。

かわばたくんともろこちゃん