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居心地のいいまちづくりを

印刷用ページを表示する 掲載日:2013年5月20日

兵庫県播磨町長 清水 ひろ子

 

四季折々の草花が道行く人を楽しませる緑道「であいの道」。春は桜の花びらがやさしく舞い、紅白のハナミズキも風情ある樹形で初夏の主役となります。JR土山駅から 国指定の大中遺跡へと続く道、この道はかつて別府鉄道が走っていた軌道敷で、今は緑道として整備され、毎日多くの方が散歩や通勤・通学に利用されています。

また、この道は現代から古代へとちょっとした時間旅行が楽しめる空間ともなっています。別名「歴史とのであいミュージアムロード」とも名づけられた「であいの道」には、 日本の歴史的な出来事を表したレリーフを持つアーチが6基、歴史的な史実を記したマイルストーンが等間隔で配置されています。時間旅行を楽しみながら、最終地点の大中遺跡、 県立考古博物館、郷土資料館へと辿ることができます。夏には近くの公園で蛍が飛び、公園内のお茶室「蓬生庵」では年中お抹茶をいただくこともできます。 こどもたちが安全に遊べる芝生広場や感知式の噴水、バーベキューを楽しむコーナーもあります。遺跡には弥生時代の住居が復元されていますが、5年前にオープンした 県立考古博物館は体験型の博物館としても好評で、すでに80万人以上の方が来館されています。都市化が進むまちに残された貴重な歴史と緑の空間です。そこから、 喜瀬川に沿って遊歩道を歩けば、まちの南端、淡路島が望める瀬戸内も遠くはありません。

播磨町は町域わずか9平方キロメートル、しかもそのうちの3分の1が海を埋め立てた人工島という小さなまちで、約34800人が暮らしています。昨年、町政施行50周年を 迎えました。人工島や臨海部では60社以上の企業が操業しており、阪神間への通勤圏内でもあることからベッドタウンとしての役割も持ちながら今日を迎えています。

そんなまちが目指すものは「コンパクトシティ」。小さなことをむしろ利点として、狭い町域だからこそできることに挑戦し続けたいと思っています。制度であったり、 施設であったり、アクセスであったり、それらの利便性は住みやすさに大きく関係してまいります。すぐそばで生活に必要なものが手に入り、少し歩けばいろんな施設が 利用でき、利用しやすい制度のメニューが数多く提供されている。ほどほどのコンパクトさが、子育て家庭にとっても、高齢化に向かいつつある世代にとっても、居心地のいい 空間になるのではと思っています。

そういったことから、前述の緑の空間も多くの方々に愛されるスポットとなっているのです。車で移動しなくても、少し歩けば触れられる「ほどほど」の自然の中で、 日常的に四季の変化や自然を楽しむことができます。播磨町には、緑深い山々も広大な草原もありませんが、高齢者から幼児までやさしく迎えてくれる整備された緑の空間が あります。荒々しい自然を好む方もいらっしゃるでしょうし、そんな世代もあるでしょうが、管理者が隅々にまで目配り、気配りできる程度のスケールで、手入れが行き届いた 疲れない自然空間を提供できるということが、多くの方々に歓迎されているように思います。また、そこで歴史文化を手軽に体験できる機会を持てるということも、 都市化されたまちで味わう今風な自然の楽しみ方ということになるでしょうか。

播磨町は町政施行以来、財政的、利便性にも恵まれた50年を過ごしてきました。これからも播磨町らしさを活かし、播磨町だからこそできるまちづくりに取り組んで いきたいと思っています。「県下最小の町域」という特性をむしろ「まちづくり戦略」のひとつとし、播磨町の特性、地域性、文化を大切にした、いろんなものがギュッと 凝縮されたまちづくりをと思っています。少しずつ手を加え、大切に守り育てて、誰もが誇りとする「居心地のいいまち」を次の世代に引き継いでいくことが町政運営の主題です。