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わが町を次の世代に引き継ぐために

印刷用ページを表示する 掲載日:2012年10月8日更新

熊本県玉東町長 前田 移津行

 

少子高齢化を一つの大きな要因に、今後日本の人口は大幅に減少すると予測されており、政府は随分前から様々な対策を行っているが、今なお、 増加に転じる要素は特に見当たらない。市町村においては、既に人口が大幅に減少している自治体が多く見受けられる。

当然と言えるのかもしれないが、私は「国や地域の大きな発展には若年層を中心とした人口の増加が必要」と考えている。勿論、地域の発展には人口要件のみならず、 教育や福祉の充実、人とひととのつながりなどの見えないものも不可欠であり、人口増がなくても成功されている地域が多々あることも知っているが、 今回は人口増の取組みに絞った話をさせていただきたい。

隣国である中国は人口世界第1位であり、近年の経済発展が著しい。先々は人口減に転じると予測されているものの、その人口による購買力は経済的な面から 魅力的なものであろう。

同じく、猛烈な勢いで人口が増加しているインドについても、御承知のとおりである。

これを我が国の市町村という自治体の枠で考えるとどうだろうか。私は同様のことが言えると思っている。事実、人が集まるところが経済の中心となり、 地域も活気にあふれ道路や上下水道といった社会資本もきめ細かに整備されている。

様々な御意見はあるかと思うが、私が考える首長の使命は「自分の地域を守り、発展させ、将来を担う次の世代に引き継いでいくこと」である。

冒頭で、地域の発展のためには若年層を中心とした人口の増加が必要との考えを述べたが、私が町長として就任した平成13年当時、 町の人口は他の町村と同様減少傾向にあり、高齢化も進んでいた。

しかし、人口約5,700人、面積24.4k㎡の小さな町ではあるが、JR鹿児島本線木葉駅を有し、幹線道路である国道208号が町の中心を通っていることから、 熊本市中心部などへの通勤・通学の利便性が良く、住宅地としてのポテンシャルは高いと考えていたため、この好条件を生かした事業を推進することこそ、 自らの首長としての使命であると考え、就任当初から定住促進を柱としたまちづくりを進めることとした。

まず、第一に取り組んだのが、町の中心に位置するJR木葉駅南側の宅地開発である。「オレンジタウン」と名付けた分譲地は、事業開始時には 事業の成功を不安視する声も聞こえてきたが、平成17年度の分譲開始から現在まで、全118区画のうち約100区画の分譲を終えており、今なお好調な売れ行きを見せている。 現在、立ち並ぶ住宅が創り出す風景は、町の元気を取り戻すには十分なものがある。

次に取り組んだのが民間資金を活用した町営住宅整備である。町には民間のアパートが不足しており、当時、結婚した若年世帯が町に住みたいという意思を持ちながら、 近隣市町に流出していた。このため、賃貸住宅を増やす必要があったが、町による住宅整備と言えば、国の補助金を受け公営住宅法に基づく住宅を建設するのが一般的であり、 原則「住宅に困窮する低所得者」しか入居させることができない。町にはこのような公営住宅は既に十分整備されていたことから、若者の定住促進を図るために 公営住宅法に基づかない(建設補助を受けない)住宅整備を行うこととした。

必要となる資金は、民間資本を活用することとし、民間が建設した住宅を町が借上げ、町営住宅として入居者に転貸するという方法をとったが、 熊本県内では初の取組みであったため、当時大きな話題を呼んだ。

この定住促進の2つの取組みが功を奏し、町の人口減少に歯止めをかけることができ、着実に一歩一歩進むことができた。

しかし、これがゴールではない。玉東町を定住の地として選んでいただいた方々と、これまで町を大切に守り発展させてきた住民がひとつとなり、 玉東町の将来を担う次の世代に引き継げるよう取り組んでいかなければならない。

そのために、福祉や教育、生活環境面などの充実は勿論のこと、次の定住促進のための取組みをどうしていくか考えることが、楽しくもあり、悩ましくもある毎日である。