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年頭所感

印刷用ページを表示する 掲載日:2012年1月9日

奈良県町村会長 斑鳩(いかるが)町長 小城 利重

2012年、辰年が幕を開けました。新しい年が輝かしい年となることを心から願っております。

昨年は、東日本大震災や台風12号による豪雨災害をはじめ、海外においてもニュージーランドや中国、トルコの大地震など、世界規模で想定外の災害が頻発し、人知を超えた自然の脅威に翻弄された一年でした。

これらの災害によりお亡くなりになられた方々に深甚なる哀悼の意を表しますとともに、被災された皆様に心からお見舞いを申しあげます。

本町では、東日本大震災の被災地への支援として、義援金や町が備蓄している救援物資を被災地に送ったほか、スポーツイベントで交流のあった岩手県大槌町へ5ヶ月あまりにわたり職員を派遣するなど、独自の支援を実施してまいりました。

私も4月に現地を訪問しましたが、目の前の光景にまさしく言葉を失いました。そのような状況にもかかわらず、被災者の方々は、我々の訪問に感謝の言葉を述べられ、気さくに応対していただいた、その冷静さに驚きを感じたとともに、逆に勇気付けられたものです。しかしながら、その冷静さ、謙虚さとは裏腹に、心の中にはどれほどの思いを秘めておられたことでしょう。その気持ちに思いを馳せるとき、被災者の心に寄り添うソフト面での対策の充実も望まれてなりません。

本年はさらに、台風シーズンには日本列島に台風の襲来が相次ぎ、とりわけ8月30日から9月5日にかけて紀伊半島に大雨を降らせた台風12号は、奈良県南部にも甚大な被害をもたらしました。私は奈良県町村会長として、直ちに三重県・和歌山県両町村会長とともに上京し、関係省庁へ災害復旧対策の要望を行った結果、国においては迅速に激甚災害の指定をいただき、感謝しているところです。

このように多発する自然災害に対して、危機管理体制の充実や地域の絆の醸成など、自治体にはこの状況に合った的確な対応が求められています。

斑鳩町では幸いにこれまで大きな災害がなく、長期にわたって避難所を開設した経験もなかったのですが、私を含め、現地へ行った職員は皆、大地震や水害はいつどこで起こっても不思議ではないこと、直ちに災害対策を充実させる必要があることを痛感し、現在、地域防災計画の見直し作業を進めているところです。災害時要援護者への対策、避難所の管理運営体制の確立、災害時に孤立が予想される地域への対策、避難勧告・指示伝達マニュアルの徹底など、列挙すればきりがないほど今後の課題は多くありますが、派遣職員の貴重な経験をもとに、早期に見直しを図ってまいりたいと考えております。

また、コミュニティの大切さもこれらの災害を受けて再確認されたことでありましょう。昔は、日本では向こう三軒両隣という優れた風習があり、調味料がないといっては借りに行ったり、おかずが余ればおすそ分けしたり、といった日頃の近所づきあいがありました。ところが、今はわずらわしい近所づきあいを避ける傾向があり、地域のコミュニティがどんどん薄れてしまっています。

しかしながら、震災を機に地域の絆が盛んに叫ばれているように、日頃の近所づきあい、自主防災組織の有無は、災害時の被害をいかに最小限に抑えていくか、の大きなカギとなります。

一人ひとりの暮らしを支えていくために、地域とのつながりやコミュニティが果たす役割はますます重要となっており、この「地域力」が住民皆様の安全と安心を支える礎になるといっても過言ではありません。

本町といたしましても、今後は「自助・共助・公助」に加え、近くで助け合う「近助」を合言葉に、互いに助け合い支えあう地域コミュニティづくりをより一層推進し、参加と協働によるまちづくりを進めてまいりたいと考えております。

斑鳩町のまちづくりを考えるとき、聖徳太子の教えが私たちを導いてくれます。斑鳩町町民憲章の前文には、「私たちは聖徳太子ゆかりの斑鳩のまちに住むことを誇りとし、和の精神を尊び、明るく豊かな郷土をつくります」と制定しております。「和」とは、おだやか、のどか、仲良くする、争いを収める、などの意味があり、コミュニティの形成には「和」が欠かせません。

聖徳太子が国づくりの礎を築かれたこの斑鳩の地で、「和」の精神のもと、職員一丸となって、災害に強い、住み良いまちづくりを進めてまいりたいと決意を新たにしております。