和歌山県紀美野町長 寺本光嘉
紀美野町は、平成18年1月1日に2町が合併し、新しく誕生した町であります。
和歌山県の北部に位置する本町は、人口約1万人余、面積128.31平方㎞のうち75%が森林を占め、町の中央を霊峰・高野山を源にもつ紀ノ川の支流、貴志川が流れ、その流域に広がる丘陵地と山地からなっています。
本町は、世界遺産である霊場・高野山と歴史的につながりが深く、町内には多くの名所や旧跡があります。また満天の星空が見える夜空を観望できる、一般公開用としては国内でも屈指の大きさを誇る口径105㎝の反射望遠鏡を備えた「みさと天文台」をはじめ、秋にはススキの大草原が一望でき、別名:関西の軽井沢とも言われる県立自然公園「生石(おいし)高原」がある自然豊かな町です。
全国的に少子高齢化が言われる中、我がまち紀美野町でも高齢化率が37%を超え、64地区中、25地区が限界集落となり総世帯数は減少する半面、独居老人が増加し、地区の社会的共同生活の維持が困難に陥る状況となりつつあります。
私は、平成18年に町長選挙を経て紀美野町の初代町長として町政を預からせていただき、現在「豊かな自然、活気と夢のあるまちづくり」を基本として2期目を務めています。
町づくりの基本的な考えとして、町民の皆様の盛り上がりと、行政が取り組む住環境整備等、この二つが両輪となることが最も理想ではないかと実感いたしております。「みんなでつくるまちづくり」という考えのもとに民活を主体とした、各種団体の方々や個人参加の方々で組織立てた「まちづくり推進協議会」が設立され、美しい郷づくりや特産品を育てていく地域ブランドづくり等の部会を設け、皆様精力的に活動を続けられています。町民の皆様の盛り上がりを象徴する団体として、町おこしの一翼を担っていただいております。
次に「活気のあるまちづくり」としてU・I・Jターンの促進では、関西圏から1.2時間程度の近場で自然が多く、山間の静かな町として人気があるため、移住を希望し相談に訪れる方々が多く、平成18年度には和歌山県が推進する「わかやま田舎暮らし支援事業」の移住・交流に係るモデル市町村に認定され、移住相談から地域案内まで行う一元的窓口を設置しております。また地域の住民等で構成されるUII・Jターンを促進するプロジェクトの支援を行っている「特定非営利活動法人 きみの定住を支援する会」及び「和歌山大学」と連携し、賃貸等可能な空き家の確保や修繕費用の情報提供を行うための「空き家情報システム」構築を行っています。現在までに都市部より59名の移住された方々が地域の存続・活性化に寄与して頂いていることは言うまでもありません。
次に「安全、安心のまちづくり」として、ヘリポートや防災無線はもちろんのこと、地域特有の対策方法を勘案していたところ、近年、地上アナログ放送から地上デジタル放送に移行されることに伴い、町内の大小40からなる地上アナログ共同受信組合の半数が、地上デジタル放送視聴のために大規模改修の必要がある状況でした。山間部特有の地形によりデジタル波が届かない地区が大部分を占めることから、地上デジタル放送の難視聴地域の解消に向け、地上アナログ共同受信組合と協議を重ね、町自らが事業主体となる全国初のギャップフィラー方式による町営地上デジタル放送中継施設の設置を行い、町内60局で平成23年3月末から放送を開始しております。採用したギャップフィラー方式は無線の共聴であり、有線によるデジタル対応より格段にコストパフォーマンスに優れているとともに、本町のような中山間地の主な災害である山崩れによる有線切断の心配がなく、災害時において、電力が途絶えても車載用テレビやワンセグ機能のある携帯電話等で、重要なメディアとしてのテレビを通じて情報を得ることが可能になっております。
平成の大合併により、市町村もその姿を大きく変えました。今日、地方を取り巻く環境は大変厳しいものがございます。急速に進む少子高齢化、地域経済の低迷、雇用問題、地方分権の推進に伴う行財政改革などの課題が山積しています。このような状況の中ではございますが、心のよりどころである豊かで素晴らしい自然を守り、新しい歴史を築いて参ることが私たち町民の責務であると強く感じております。気さくで温かく、情熱的な町民の皆様の後押しに助けていただきながら、紀美野町が活気と夢のある町となるよう、今後とも邁進して参りたいと思います。