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朝一番「おはようございます。」

印刷用ページを表示する 掲載日:2011年6月27日

長野県長和町長 羽田健一郎

人生には何度かの転機が必ず訪れます。
私は、大学を卒業して、東京で代議士の秘書を勤めていました。秘書を仕事として、二十六年経ったころ、転機がやってきました。私のふるさと和田村(現:長和町)で、村長選挙が執行されることになり、その村長選挙に立候補しないかということでありました。自分の生き方に処する考え方をまとめ、方向性を見出すのに時を要しましたが、生まれ育った和田村のためになろうと一念発起し、立候補を決意しました。以降、村長を八年ちょっと、平成の町村合併後、長和町の町長として六年目になろうとしているところであります。
この町で生まれ育ち、そして、選挙運動中に全ての町民と言っても過言でないほど、直接会って話を聴いている中で、色々な事情を知ることができ、また伝え聞くことで町の抱えている問題点や課題を掘り起こすことができたと今以て自負しております。このような状況の下で、問題点や課題の解決をはかり、町民の負託に応えていくためには、何を言い、何を行っていかなければならないか深慮していました。
一般論として、「町づくりは人づくり」と言われ、私もその認識を持っており、職員によってより良い町が創り出されるものと考えておりましたので、先ず、職員一人ひとりを精鋭化し、その力を結集し組織としての総合力を高めていく必要があると考えていました。村長時代からいつも疑問に思っていたことは、職員を交えた会議等を開催している中で、職員の説明力、説得力、追求力等が若干不足していることを感じ、どうしたらこのような力を職員に身に付けさせることができるのか色々と頭を捻っていました。一朝一夕には事は成し得ないわけですが、結果、これだと思い浮かんだのが「朝礼」であります。毎日行われる朝礼を単なる事務連絡のみで終わらせるにはもったいないと思ったのです。
こうして朝礼を職員のミニ発表の場と位置づけ、職員には、町のため、町民のためにも自分の考え方を自分の言葉で堂々と表現できる職員になってもらいたいと考え、行政全般あるいは、自己の生き方、出来事等、どんなことでも人前で表現する力や度胸を付けさせる場になると判断し、毎日の朝礼を職員が順番で行うことを発案し実行してきました。
これが朝一番である。今日は何月何日何曜日から次に必ず「おはようございます。」で始まります。職員同士、元気な挨拶を交わし、次に、最近の出来事、本日と過去の出来事、自分の生き方、考え方等々を結びつけて、色々な角度から発表する。こうすることによって、職員の表現力等も培われるし、更には、毎日気持ちの良いスタートが切れるのではないか、朝礼を単なる儀式で終わらせるのではなく、朝礼とはこのためにあるものと考えています。
夜更かしして寝不足の人、二日酔いで頭が痛い人、仕事に追われている人、出がけに奥さんとケンカしてイライラしている人、又、今日中に仕事を片付けなければならなくてウンザリしている人など、朝から気分爽快とはいえない人様々でありますが、この三分、五分の朝礼の中で、大いに緊張し、気分転換して、「よし、今日もやるぞ。」という具合に意気込みを出していきたいものであります。
また、朝礼はコミュニケーションや仕事の指示、連絡の場でもあります。
お互い元気な顔を確認しあい、指示、連絡によって今日一日の行動を組み立てる大切な時間でもあります。
今まで、こうした試みの中、16 年以上職員の成長を見守ってきましたが、この朝礼方式は、職員の資質あるいは実力の向上につながっており、会議の職員の説明や答弁がはきはきとしてきており、着実に進歩が見られ、成果が上がってきています。
今後も、この朝礼を職員研鑽の場としてバージョンアップしていきたいと思っています。