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21世紀持続可能な地域社会をつくる

印刷用ページを表示する 掲載日:2011年3月28日

徳島県上勝町長 笠松和市

1月末で65歳となり介護保険証が送られてきた。高齢という感じは全く感じていないが、月日の経つのは早いものである。
私が役場に入ったころ、農道や林道の開設は国庫補助の残り50%はすべて地元受益者負担で町費はゼロ。これだけ農村社会は実力があった。農林業は昭和40年代から所得倍増・高度成長により衰退、代わって公共事業の土木建設業や弱電縫製工場が進出してきたが、弱電縫製工場は中国や東南アジアへ移動し、近年公共事業は国家財政の行き詰まりから激減し、地域経済そのものが成り立たなくなってきた。国際化の進展と賃金格差、円高等により、国際競争力が弱くなり工場が海外に移転し始め、日本全体が上勝町のように少子高齢社会になり人口減少が急速に進み、消費が減少し経済が縮小する時代に来ている。しかし、地球全体では2050年の世界人口は現在より20億人増え90億人を突破するという人口爆発が起きている。地球温暖化も急速に進み、世界各地で局地的に気候変動による大災害が発生している。
このような時代背景の中で、今世紀最大の環境問題「地球の温暖化」をはじめ「超高齢社会」、「物が売れなくなり価格が下がる」、「医療介護などの福祉事業費の増大」、「雇用の減少」、「失業や生活保護世帯の増加」など日本が直面している多くの問題や課題を、順次世界の国々が経験することになる。極論すると、上勝町はこうした日本や世界の縮図であり、21世紀型の環境と経済が両立する持続可能な地域社会づくりを模索している。
私が生まれ育ったころのように地域社会が自立するためには現在の最先端技術を活用し、太陽・水力・風力・森林資源などを活用しエネルギーを電気や熱に変換し、地職住(地域資源を利活用し職場をつくり地域の住宅に住む)を推進することで、地球温暖化・超高齢社会・物価の下落する時代を乗り越えて、世界初の「21世紀持続可能な地域社会モデル」を築くことが必要と考えている。人類誰も経験したことがない温暖化や高齢社会をどう生き延びるか人間の力量が試される時代に突入している。そして上勝町は超高齢社会の世界の最先端を走っている。
彩り農業やゴミの分別資源化・くるくるショップ・くるくる工房の取り組みが世界に流れ、国内外から毎年4千人を超える視察や見学に来る高度情報社会。
高齢者が元気で笑顔が絶えない「そうだ葉っぱを売ろう」が今年映画化される。お陰で後期高齢者医療費は徳島県内では最も低い。
今年、全国棚田サミットが10月28~29日に本町で開かれ、平成24年には国民文化祭が徳島県で開催されるほか、我が町にも中学生の修学旅行の予約が入ってきている。
柿やモミジの葉っぱが売れる時代、杉やヒノキ、雑草や苔、太陽、水力、風力、棚田、農村風景、お祭りなど数多くの地域資源を活かし「地職住」を推進することにしている。
「超高齢社会」は経済が縮小し、いずれ工場は新興国へと徐々に移行し雇用が少なくなる。これからの10~20年はGDPからGNHを求める時代へと発想を変え「経済と環境が好循環する持続可能な地域社会」〝日本(世界)で最も美しい集落再生"を実現し、「世界に誇れる小さな幸福社会」を目指している。