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 「風土産業」に夢をみる

印刷用ページを表示する 掲載日:2010年8月23日

兵庫県多可町長 戸田善規

今朝方、嬉しい夢を見た。

きっと昨日の得も言えぬ展示が(そしてそれが私のまちづくりの完成型を暗示させるがゆえに)私の脳を鮮烈に刺激したからだろう。
見事に7年前の記憶が蘇った。
鬼籍に入られて久しいが、愛知万博総合プロデューサーなども務められた木村尚三郎先生(東大名誉教授・当時) に我が町へ来ていただき、アドバイスを受けたことがある。
わが町は、中山間地域を含む農山村で、町土の8割を森林が占める。

「町長、植わっている樹種で多いのは何? もし檜が多いなら、檜を活かしなさい。檜は陽性で、人を明るくさせるから・・。まちづくりには格好の素材になるよ。」

分かりやすく指導いただいた様子を 夢の中で思い出した。
合併論議もあって具現化ができず 「檜を活かす秘策」は、課題として残っ たままだった。

檜と繊維のコラボレーション

商工会からの案内状を見て驚いた。
なんと「多可ひのき木綿」製品の内覧会・説明会とあるではないか!
商工会と神戸芸術工科大学との産学連携により、檜の表皮やオガ粉を繊維に練り込んだ新素材の開発や製品化がなされているのだ。
多可町は隣接の西脇市と並んで「先染め織物・播州織」で戦後に一世を風靡した繊維の町でもある。
トートバックをはじめとする多種多様な繊維製品に加え、檜のテーブルやイスなどのインテリア製品が、会場にナチュラルで柔らかな雰囲気を醸し出していた。
試作品の数々は、まさに素材の檜と先染め技術のコラボレーションであり、その発案・発想は私の思考不足を埋めて余りあり、感服至極、感謝感激するところであった。

TAKAブランドの創設

檜素材の自然色は、人をあまりにも優しく包み込む。
オーガニックは、いま大ブームなのだと女性秘書から聞かされた。
試作品のデザインやセンスも神戸流のファッション仕様で、商品化は十分に可能と確信できる。
さてさて、何より重要なのはブランド名と、その標章だ。
マス形の濃緑の地色に抜き文字で「TAKA」との表示が美しく映える。

ここから、また今朝方の夢の中の話 に戻るが・・・
よし、これで町と一体化した多可のブランドが完成した。  商工会と一緒に産品を町行政が全面的にPRしていける。
私自身がトップセールスマンとして販売攻勢をかけよう。
そうだ、私の目指した多可町の姿 は、ヴィトンやシャネルに匹敵する特産品のブランド化とあわせて、町自体のイメージが全国に発信できる「小さくともキラリと輝く町」だ!

あまりに嬉しくなりすぎて、木村先生に報告をしようと思った途端に目が覚めてしまった。

多可町は「風土産業」を育てる。

それぞれの町に個性がある。そして 特性を活かした地場産業がある。  私の考える「風土産業」は、もっともっと町の個性と特性を凝縮させたものだ。

「地場産業×地場産業」+「知恵・アイデア」+「郷土への誇り」=「風土産業」と数式化できる。

風土産業は必ずユニークな産品を生み出し、町そのものをも広く情報発信させるはずだ。
豊かな感性とITを駆使しての商品開発が図られ、極めて高度な販売戦略が練られるだろう。
そんな風土産業が根付くならば、故郷を愛する優秀な若者の知識と能力が活かされ、定着が可能だ。

「郷土への誇り」気高く!

わが多可町は、兵庫県の中央部、旧国名では播磨の最北部に位置する合併新町だ。
多可郡内の旧4町のうち、3町(中町・加美町・八千代町)が合併してできた人口2万5千人、面積185平方キロの多自然居住の町である。
大阪空港や新幹線・新神戸駅からは70分での到着も可能で、都市部から来た若者は「中途半端な田舎」と当初は異口同音に形容する。
一見すると、何の特長もない田舎の町に見えるのかもしれない。
でも違う。ハード・ソフトの両面で、 強烈な地域資源を有する町だ。

酒米の王様「山田錦」の発祥の町、日本一の手漉き和紙「杉原紙」(宮中歌会始めの専用和紙)を有する町、9月15日を国民の祝日とした「敬老の日・提唱の町」でもあるのだ。

途中に合併選挙があったため、町長職就任10年目で4期目となったが、まだまだ私は未熟である。
「風土産業の樹立」と「郷土への誇り」を気高く掲げ、魅力にあふれキラリと 輝きを放つ町、そして「くの能性を有する多可町を住民の皆さんといっしょに創りあげたいと考えている。