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 ネーミングについて

印刷用ページを表示する 掲載日:2010年3月29日

兵庫県町村会長 市川町長 尾﨑光雄


兵庫県のほぼ中央に位置する市川町は、昭和30年に旧4ヶ村が合併して発足しましたが、平成の大合併には乗れず55年を経過します。合併当初15,500人の人口が今日では14,000人弱となり、年少人口率が下がり老年人口率が上がっています。この傾向を打開する施策が見当たりません。それに加え、財政健全化4指標による財政の評価は、柔軟な政策形成に強いプレッシャーになっています。
財政運営にとって第1の要諦は、新政権の打ち出した「無駄を省く」という一言に尽きます。しかし、小さな規模の行政では、事業仕分けなどという大層なことをしなくても全てが透けて見えます。問題は、透けて見える現実を、大きな規模の行政のまねをして回りくどく持ちまわらないことだと思っています。
そこで、住民の厳しい目と限られた財源の中で効果的に事業を展開することにより、町の活性化、人口増加を考えなければなりません。そのためには、住民の目を事業に向けさせ、理解を求める手を打たねばなりません。
最近は、地域に衆目を集め特性を売り出そうとするゆるキャラとやらにいろいろな愛称がついています。特に有名なものには「ひこにゃん」「せんとくん」など。同じように、事業展開の一策として、施設や事業に親しみやすい「愛称」をつけることは効果的だと思います。
私は、以前からこのようなネーミングについて関心を持っていましたが、時々首をかしげることがあります。それは、その施設や事業と全く関係なく、また一言説明を加えなければイメージも涌いてこないような名称がしばしば見受けられるからです。町長就任からの10数年間、事業や施設に多くの名称をつけてきましたが、その愛称が、場所、目的を連想させ、勢いとか雰囲気を訴えるものでなければ、何のためのネーミングかということになります。
中山間に位置する市川町の売りは、なんといっても夏に子ども達に喜ばれる、かぶと虫に触れて楽しめる、日本一を誇る「かぶとむしどーむ」です。この施設は、1990年代に緑の空間整備事業で整備した25ヘクタールの「リフレッシュパーク市川」の中にありますが、同じくその中に建設した宿泊のできる研修棟には「どんぐりころころ館」と命名しました。また、その隣に建設した、かぶと虫、くわがた虫に特化した展示室を併設した林業研修施設には「かぶと・くわがたわくわく館」と看板を掲げました。「かぶとむしどーむ」からそれぞれの施設を結ぶ橋を「わくわくばし」と呼んでいます。少々手前味噌になりますが、なんとなく施設のイメージが湧き、関心が高まるのではないでしょうか。
ネーミングといえば、近年の子ども達の名前に読みにくい漢字の使用が増えています。特定の名前を挙げることは避けますが、日常、賞状や証書の読み上げで混乱することがあります。今問題になっている国民年金の名寄せなどでの混乱も避けられないでしょう。あまり突飛な漢字の組み合わせや当て読みはいかがなものでしょうか。戸籍は漢字名が普通で、振り仮名をつければ全てにつきまとうことから振り仮名は避けられています。名前は何のためにあるのか。どう考えてつけるものなのか。もっとも大切なネーミングです。読めないような、読み間違えられやすい名前は考え物です。