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 「ホタテ」に懸けた町づくり

印刷用ページを表示する 掲載日:2010年2月1日

平内町長 逢坂 雄一
 
平成16年「68億円」、平成17年「74億円」、青森県の100億円産業に成長したホタテ養殖の中での、平内町漁協の過去の実績で町経済の根幹であります。 
しかし、私が町長に就任した平成7年から8年にかけて、中国産ホタテの輸入急増、国内産ホタテの生産過剰で販売価格が低迷、県産ホタテの約半分の生産量を誇る平内町のホタテ養殖は非常に厳しい状況にありました。
平成8年には漁協、議会、町三者一体で対策本部を設置し、大型貝生産推進大会や漁協支所座談会を開催し、品質の向上と大型貝への移行に向けた取り組みを推進することにしました。その中で国内の動向・生産状況や中国における生産現状について調査を実施する必要性が取り上げられ、漁協、議会とともに中国の大連、煙台、青島を訪れ目の当たりにした大規模なホタテ養殖の実態に将来への危機感を抱いたところでした。
ホタテ養殖漁業に初めて取り組んだ平内町ですが、自然を相手とした漁業には様々な障害があります。特にホタテ貝の大量斃死は生産量の減少に直結します。町では、このような災害に対する対応策として、ヒトデ駆除を始めホタテ斃死災害利子補給金、台風による災害利子補給金、ホタテ貝特定養殖共済補助金等を交付し、漁家経営の安定を図って継続的な漁家経営の確立を図ってきました。その結果、昨今の経済不況の中でも昨年62億円の生産高に回復いたしました。
しかしながら、今の陸奥湾のホタテ貝生産は漁場環境生産量からみて過剰と考えられ、平成21年度からの「ホタテ貝適正養殖可能数量制度」(タスク※)の導入は、品質の向上に加え生産効率を高め、養殖漁家、加工業者への経営安定をもたらすことになるので、制度が定着するように全力をあげて支援しなければと考えております。
ホタテ養殖は家族経営が主体ですので、昼夜を問わず作業に携わる漁業者の方々にとって、食生活が大きな悩みでした。特に何ヵ月も続く朝早くからのホタテの出荷時期、小中学生を抱えた若いお母さん方の苦労は並大抵ではありません。「給食センターを造って」との要望に応えて町内全小中学校対応の施設を、町長就任から3年後、平成11年2月に総工費9億2,700万円余円を投じ短期間で完成・供用開始、漁業者だけでなく共働き世帯等を含め多くの方に喜んでいただいております。
また、東北地方唯一の水産系廃棄物処理のため焼却施設を建設、公共下水道、農業集落排水事業、漁業集落環境整備事業、合併浄化槽推進事業等、あらゆる方策で閉鎖性水域の陸奥湾を未来へそのまま引き継ぎ、養殖漁業を継続するための水質保全に全力で取り組み、資源管理型漁業積極的に推進しているところであります。
このように平成7年に町長に就任して以来、町の基幹産業である「ホタテ養殖」を守り育てるための多くの施策を講じてきました。しかし、それが漁業だけでなく現在の平内町全般の発展につながってきたと自負しております。
小中学生全員に栄養バランスのとれた昼食、家庭の経済格差等家庭環境に関係なく同じ昼食の提供等、給食センターの教育現場で果たした役割は大きなものがあります。水質保全のための各種下水道事業は画期的に町民の生活環境を改善しました。
また、ホタテ漁業を観光産業と融合させることによって、一層の地域活性化を図るため、都市住民との交流の場としての産直施設「ほたて広場」の整備や、生産者、消費者が一体となり一日で2万人の来場者がある「ほたての祭典」の開催、体験型観光漁業である「漁船で行GO!」の支援などを通じて、「ホタテなら平内町」といった知名度アップと観光客を呼び込むことによるビジネスチャンスの拡大等、「ホタテ」を核にまだまだ町づくりの夢が広がります。
※タスク(TASC)Total Allowable Scallop Cultureの略。「ホタテガイ養殖可能数量」を指す。