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 初心忘るべからず

印刷用ページを表示する 掲載日:2009年10月5日更新

和歌山県有田川町長 中山 正隆


○有田川に育まれて
平成18年1月1日、吉備町・金屋町・清水町の3町が合併して、有田川町は誕生しました。町名が表すとおり、世界遺産・高野山を源流とする有田川が、町の中央部を東から西へと流れています。
有田川流域の豊かな風土は、バラエティに富んだ農林産物を生みだしています。全国的に有名な地域ブランド「有田みかん」をはじめとする柑橘類、生産量日本一を誇る「ぶどう山椒」、「スプレー菊」や「トルコギキョウ」などの花卉、「ししとう」や「トマト」といった高冷地野菜など、様々な農林産物の生産が盛んです。
また、有田川は、私たちにもう一つ、自然の恵みをもたらします。それは、「鮎」であります。鮎釣り場として有名な有田川には、京阪神からも友釣りを楽しむ釣り人が集い、賑わいを見せています。
 
○自然との共生
さて、バラエティに富んだ農産物を紹介させていただきましたが、わが町は、地域ごとの特色も実に様々なものがあります。有田川下流域では都市計画区域が定められている一方で、上流域では自然豊かな国定公園や県立自然公園を有しています。
町のシンボルである景勝地も数多くあります。代表的なものとしては、白い風車と青い空、色とりどりのコスモスが織り成すコントラストが美しい「鷲ヶ峯コスモスパーク」、ススキ草原とパノラマビューが楽しめる「生石高原」、“日本の棚田百選”にも選ばれている「あらぎ島」などがあります。
地域の誇りとして愛されているこれらの景勝地には、住民の方が、率先して環境整備やイベント運営などの取り組みをされています。一例を挙げると、「あらぎ島」では、地元の保育所の子どもたちや自営業の方々、都市部の方に田植えや稲刈りを行っていただいています。さらに、本町は秋篠宮妃紀子さまとの縁が深いことから、地元有志が中心となり、悠仁さまのお誕生日である9月6日に、あらぎ島の畦道に設置した竹灯籠に火を灯す「キャンドルライトイルミネーション」というイベントが開催されます。それぞれの主旨・目的は異なるものの、こういった取り組みを通じて、郷土を愛し、農村を守る風土が醸成されていくことは、行政を担う者として喜ばしい限りであります。
なお、平成25年には、本町で全国棚田サミットが開催される予定です。全国に有田川町の魅力を発信する絶好の機会として、注力していきたいと考えています。
○これから
本年4月にオープンした「有田川町地域交流センターALEC」は、連日多くの方にお越しいただき、好評を得ています。今後、町内の観光施設などを結ぶ巡回バスの運行を年内に開始し、明年3月には有田川町鉄道交流館がオープン予定です。
これからも、有田川町が持つ力・可能性を最大限に活かすための施策を講じるとともに、育成が必要な分野においては、行政からの支援を行っていきます。
私は、「初心忘るべからず」という言葉を座右の銘としています。これは、室町時代の能役者・能作者、世阿弥が遺した言葉です。合併から3年が経過し、これまでを振り返ってみると、まずまず順調なスタートをきれたのではないか、との思いがあります。
しかし、初代町長として抱いた志や目標を忘れてはいないか、そして、試練を乗り越えてきたこれまでの経験を忘れてはいないか、と常に自らに問いかけています。町民の皆様や、本町を訪れる方の声に耳を傾けながら、これからも誠実に、そして謙虚に町政に当たっていく決意です。