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地場産業とデジタルテクノの共生

印刷用ページを表示する 掲載日:2008年12月15日

地場産業とデジタルテクノの共生

長崎県波佐見町長  一瀬 政太



長崎県のほぼ中央に位置する『陶磁と緑のまち波佐見』は、東は佐賀県武雄市、嬉野市に、北は佐賀県有田町、西には長崎県佐世保市、南は川棚町に接し、長崎県、佐賀県の県境にあります。

海洋圏の長崎県で唯一海に面していない町で、地形的には周囲を小高い山々に囲まれた盆地の形態をなし、総面積56平方キロメートル、人口15,400人、窯業と農業を基幹産業として発展してきました。

波佐見焼は、豊臣秀吉の朝鮮出兵の折、大村藩主が朝鮮人陶工を伴って帰国し、開窯したのが始まりです。

特に昭和40年代以降は高度成長の波に乗り、分業化と機械化を図り、良質で安価な陶磁器製品を全国に供給し、全国和食器の約17%のシェアを有し、平成元年前後には販売額で250億円、生産額で162億円の業績を残しましたが、バブル崩壊により現在では生産、販売ともピーク時の約3分の1までに落ち込み、低迷しています。

私は平成10年に町長に就任しましたが、その数年前に、中央小学校や、総合文化会館、給食センター等の建設で約60億円の膨大な投資がなされ、財政が逼迫する中、更に公共下水道事業、土地区画整理事業等の大型事業が決定し、11年度から事業着手となったため、平成10年度に『波佐見町財政構造改善計画』を策定し、徹底した行財政改革に取り組み、事業の推進を図ってまいりました。その結果、平成十年度と比較して平成19年度においては、職員数が118人から105人へ、地方債の残高が81億7千万円から70億9千万円に減、積立金が10億7千万円から20億6千万円に増となりました。職員数は類似団体で住民1万人当たりの職員数が全国一少ない町となりました。

また、市町村合併については、県内でも理想の枠組みと言われた東彼杵郡三町での合併を目指し、平成14年11月に合併協議会を設置し、協議を進めてきましたが、協議の途中でお互いの理解が得られず平成17年3月に破綻し解散しました。

その後、直ちに住民に対し状況報告と『行財政改革・集中5カ年計画』を提示し、当分は単独でいくことの理解を求めました。

このような中、本町の地域再生策の重点施策として『地場産業の振興、観光推進、企業誘致』を掲げ町の活性化に取り組んできました。

低迷する窯業ではありますが、「進化する波佐見焼」をテーマに、電子レンジや食器洗浄機対応の食器、ユーザー志向の新商品、エコタイル・蓄光陶板などの商品開発を進めるとともに、東京ドームをはじめ都心での需要開拓・PR活動を積極的に進め、官民一体となった波佐見焼ブランドの確立に取り組んでいるところです。業界内では、「今、全国一元気のある陶磁器産地」として評価されています。

また、観光推進においては、平成13年に「来なっせ百万人」をスローガンに掲げ、産業体験型観光(クラフトツーリズム活動)に取り組むとともに、「陶器まつり・桜陶祭・棚田まつり」等の個性あるイベント開催により交流人口が毎年漸増し、現在約60万人となっています。

来秋には「新温泉センターとボートピア」の開設もあり、2、3年後には目標達成と交流人口の拡大による町の活性化がさらに期待できるものと思います。

企業誘致においては、平成17年長崎県が工業団地の整備方針を示した時、即座に手を挙げ、工業団地の誘致に向けた活動を展開し、地権者への協力依頼、職員の県部局への派遣等積極的に取り組み、平成18年に正式決定されるに至りました。

平成19年には40ヘクタールの用地交渉が短期間で成立、20年当初から造成工事に着手され、1月末完成を目指しています。造成半ばの本年7月7日には、カメラ業界の世界的トップ企業であるキヤノンの進出が決定されました。

予想も出来なかった有名大企業の進出に県を始め、町内でも大いに話題が沸騰しているところです。キヤノンの進出により、本町の活性化はもとより、県北、県央の活性化と雇用の創出に大きく貢献できるものと期待しています。

波佐見町再生の三本の柱が、今、まさに緒に就いたところであり、今後は本町の歴史文化や地場産業と世界の最先端の大企業との共生を図り、地域力を最大限に生かした町づくりを進めたいと思っています。