東京都瑞穂町長 石塚 幸右衛門
瑞穂町は、首都東京の北西部に位置し埼玉県に接しておりますが、総面積7.1に及ぶ在日米空軍横田飛行場があります。この横田飛行場(横田基地)は、瑞穂町を含む5市1町にまたがっており、基地の1/3の面積は当町に属し、滑走路はまるで瑞穂町の中心部に楔を打ち込むように伸び、米軍機が離発着を繰り返しているのです。
この横田基地の民間との共用化がとりざたされており、この事について、近頃の情報により私の思いを述べさせていただきます。
東京新聞には少し詳しい報道がありましたが、東京都(知事本局)が企画した「横田基地軍民共用化推進セミナー」が、3月27日、新宿にあるハイアットリージェンシー東京のホールで開催されました。軍民共用化に関する検討委員会(委員長・杉山武彦一橋大学長)の催行となっています。
講演者は、日本側が塩見英治中央大学経済学部教授と日本空法学会の坂本昭雄理事で、米国よりはポール・S・ジアラ氏(元国防総省日本部長)及びW・ロバート・ピアソン氏(元国務省局長)とありました。ここで私が懐かしく思った事は、マリア・ファーカスさんの名前がポール氏の資料に出ていた事です。元とありましたので、既に同嬢はThe Hudson Institute(ハドソン研究所)を辞められている事を知りました。日本語が堪能であった若き才媛とお会いしたときの光景が、今でもはっきりと目に浮かびます。
横田基地の軍民共用化は、石原慎太郎東京都知事が選挙時に唱えた「横田基地返還」の公約が、何時の間にか衣替えをしたものであり、共用化についてはマスコミでよく取り上げられますので、ご存知の方も多いことと思います。
私は、戦後60年に渡る日本政府の姿勢転換を、町民にどの様に説明してくれるか問いたいと思います。即ち、基地の存在意義が「極東の安全・日本の平和」から「儲かります(経済性)。便利になります(利便性)。」との世間事情に変わってしまうのか、という事です。
そして、肝心なことは、飛行直下にある地方自治体に対する、航空機騒音への対応です。日本国土の防衛が、いつの間にか利便性・経済性に置き変わり世論誘導だけが進んで行き、マスコミも同調している傾向があるように感じております。
今回のセミナーは、なかなか進まぬ共用化について、挽回策として企画されたものでありましょうが、成功とは言えないものとなりました。東京新聞を除く、新聞各社は報道に積極的ではありませんでしたし、米国バージニア州(アレキサンドリア)The Spectrum Groupの(TSG)に発注した調査結果も私には、不十分なものに思えました。
この調査に要した費用についてはさておいて、当日配布された資料によれば、更なる調査(費)の要望が出されています。そして、やはり航空機騒音に対する言及はなく、この2点が気になりました。
私は、瑞穂町制施行と同じ年の昭和15年に生まれ、同年に横田基地(前・帝国陸軍多摩飛行場)が完成しました。そして現在私は、瑞穂町長の職に就いております。
奇しくも3点が一致する運命に遭遇し、町民3万4千人の期待に応え、横田基地問題に全力で対応することが私の使命と考えております。
在日米軍の再編に際し、全国の関係市町村に先駆けて航空自衛隊との共用の容認を公表致しましたが、それは日米運命共同体の一国民の義務とも感じ、また、私が基地問題に当る申し子と思うからでありました。