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 小さな町の大きな国際交流

印刷用ページを表示する 掲載日:2005年6月20日

小さな町の大きな国際交流

香川県多度津町長 小國 宏

  
「政冷経熱」-経済関係は順風満帆にありながら、政治情勢は冷え込むばかり、最近よく耳にする現在の日中関係を表す象徴的な言葉である。今春には、国連の常任理事国問題や教科書問題などに端を発し、若者を中心とした反日感情が高まり、中国国内の諸都市でデモが激化し、日中関係の悪化が懸念されているところである。私はこのような状況を憂い、心痛む思いを禁じえない。

1972年日中国交回復がなされて、過去の不幸な歴史から新たな友好の歴史が始まり、全国的に多くの自治体が日中友好交流に取り組んでいると聞いている。

当町では、私が平成3年町長に就任早々、友人の紹介により始めた上海市普陀区との暖かな友好交流が、今日まで継続的に行われている。それは、国際化時代といわれる中、地方にあっても外国の方々と接し、国際感覚を身につける機会を町民とともに共有したい、さらには次世代を担う若者にも早くから国際感覚を養い、逞しく成長してほしい、そのような気持ちを込めて始めた小さな事業であった。

普陀区は上海市の北西部にあり、人口は現在86万人、高層住宅やオフィスビルが建ち並ぶ大都会に今や発展している。このような区と小さな田舎町である多度津町が縁に結ばれ、友好交流を始めてはや13年が過ぎた。交流当初、人口規模も違い、文化や言語、生活様式、習慣が異なるお互いが、どのように理解しあい、友好を深めることができるのか大きな不安を抱えていたものだが、今となっては、それは杞憂であったようだ。

こころを通わせたいと思い、相手を理解しようとすれば、気持ちは通じるもの、自ずと表情やしぐさに表れてくる。自然に笑顔が溢れ、笑い声が起こる。見て、聞いて、話して、触れることによって多くのことをこころと体に吸収できる。実際の自分自身の体験から、その国やそこで暮らす人に対する感覚や感情が湧き出してくることが大切なことだと感じている。

多くの町民にこのような機会を提供できていることは私の喜びとするところである。これまで普陀区からは20回代表団を迎え、当町からは「普陀区への友好の翼事業」で、4回延べ500人近い方々が上海市をはじめ各都市を訪れ、市民・町民間での交流を行っている。また、上海市で2年に1度開催される国際花博覧会では、女性の皆さんに華道・茶道を通じて、日本文化の紹介も行っている。

さらに、大切なこととして7月の夏休みを利用して相互に30人ずつが訪問しあう中学生交流事業は、今年で10回を数えることとなる。柔軟な感性を持った若者がホームステイや様々な交流行事を通じて、お互いを認めあい、解りあおうとする姿は頼もしい限りである。将来お互いの国の礎となる彼らが、このような体験から一様に刺激を受けて、国際感覚を養い、大きく広い視野を持った人間に成長し、さらなる友好や平和に貢献できる人材に育ってほしいと願っている。

昨年の秋、私事を申し上げ心苦しく思うが、このような継続した取り組みが評価され、上海市人民政府から「白玉蘭記念賞」を授与される光栄に与った。この賞は上海市の経済や国際交流に功績のあった全世界の外国人を対象に贈られるもので、人的友好交流の功績が評価されることは数少なく、大変貴重なもののようである。

私は「春風以人接-春風を以て人に接する」を信条としている。春の風の如く、暖かく、爽やかに、ごく自然に、思いやりの心、素直な心を持って人々と接することが、何よりも大切であると思っている。そうすれば、自ずと心と心の会話が成り立ち、信頼感が生まれてくるものである。

国際化が進んだ今日、中国との関係ばかりでなく、諸外国と良好な関係を築いていく礎となるものは、地道でささやかな友好交流であり、このような積み重ねが真に大切であると感じるこの頃である。市民・町民レベルでの交流がもっともっと拡大し、相互の理解を深め、信頼を増していく。その継続が真の友好と信頼に発展するといえよう。