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 遠賀川の源流に育む豊かな人とみのりの里

印刷用ページを表示する 掲載日:2003年10月27日

福岡県嘉穂町長  高倉 円次

町の概要
昭和30年に1町3村が合併して誕生した嘉穂町は福岡県のほぼ中央に位置し、三方から山に抱かれた人口約1万人の町です。古処山頂付近に自生する国指定特別天然記念物のツゲの原生林をはじめ、日本海に注ぐ遠賀川の源流点を持つ清流に恵まれた緑豊かな美しい町です。
本町では、古代の重要な遺物が多く発掘されており、中世においては城下町として栄え、歴史も古く、今もその面影を残す風情が見られます。豊臣秀吉が九州出兵の際に秋月氏攻路の恩賞として賜下した陣羽織(国指定重要文化財)は、町の財産として大切に保存されています。
また、飯塚市から小石原村、日田市を結ぶ国道211号と北九州市から田川市、甘木市、久留米市へと結ぶ国道322号が本町で十字に交差し、交通の要所としても着目されています。
本町の基幹産業は農業で、水稲や果樹、蔬菜等、中山間地域の特性を活かした高品質な農産物には定評があります。昭和50年から九州では珍しいりんごの栽培に取り組み、今では梨や柿などとともに「フルーツの里」として福岡市や北九州市など県内外から多くの観光客を迎えています。また平成9年にオープンした物産館「カツホー馬古屏」は、年間約6億円を売り上げる県下でも有数の農産物直売所として広域から多くのお客様が訪れ、生産者の顔が見える農業が定着してきました。
しかし、産業構造の変化や少子高齢化などの社会情勢を背景に過疎化の歯止めはかからず、厳しい状況があります。
これからのまちづくり 
平成14年に策定した第4次嘉穂町総合計画では、嘉穂町の将来像を「遠賀川の源流に育む豊かな人とみのりの里」とし、豊かな自然とそこに育まれた文化・産業・人を大切にし、いきいきとした豊かな生活を想像するまちづくりを目指しています。
中でも今後期待されるのは、平成14年度から国直轄の調査が開始された国道322号の八丁峠トンネル化です。八丁峠は、急峻な峠に阻まれ道路線形も悪く、冬季の凍結や雨季の土砂崩れなどたびたび交通規制が行われ、幹線道路としての役割を果たしているとはいえない状況にあります。しかしこのトンネル化が実現すれば、圏域の経済、文化の活性化はもとより、九州における物流及び地域間交流の大動脈としての機能が期待されます。
さらに、これまで公共交通機関として機能していた西鉄バスが来年には山間部の赤字バス路線から撤退しますが、なくさないでほしいという多くの町民の要望に応え、町内の主要施設と山間部を結ぶ地域路線バスの運行を平成16年度から開始します。交通手段のない子どもや高齢者のため、点在する山村を陸の孤島にしないために今後のまちづくりには欠かせない重要な行政施策だと確信しています。
当町では住民によるボランティア活動が盛んで、多くの団体が積極的にまちづくりに関わっています。遠賀川の水質浄化や保水能力を高めようと活動している「遠賀川源流の森づくり推進会議」は、遠賀川の上流から下流域までのたくさんの方々の支援を受けて、源流部である嘉穂町で植樹や下草刈などの活動を続けています。このようなボランティア活動は、大変ありがたく、また大切な地域づくり活動であると考えています。
現在、筑豊の嘉飯山地域でも2市8町の枠組みで20万人都市誕生のため法定協議会が設置され、市町村合併の協議が進められています。2市8町という10の自治体の枠組みの中で様々な意見を調整し、また、嘉穂町を愛している誇りを失わず、新市誕生に向かって進んでいかねばと考えています。