ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > 町村長随想 >  おたまじゃくしに魅せられて♪♪♪

 おたまじゃくしに魅せられて♪♪♪

印刷用ページを表示する 掲載日:2003年2月3日更新

おたまじゃくしに魅せられて♪♪♪

滋賀県高島町長 萬木綱一

元旦の朝8時、郵便局の年賀状配達の出発式が、今年の初仕事となりました。

氏神様への初詣をすませて、願い寺へ年始に廻り、隣組の「日待ち」へ出かけました。日待ちは、10軒余りの隣組の自治組織の中で、まわり持ちで行われる、年始めの年中行事のひとつです。神を祭り、鏡餅と御神酒をそなえて、組長の引きつぎ式を行い、後宴は、戸長が酒を酌み交わしながら、すきやきをつついて、親交を深め、情報交換をするというのが、古くからの習わしになっています。

夜は、テレビを独り占めして、ウイーンフィルのニューイヤーコンサートに浸りきり、アーノンクール指揮のワルツとポルカを久方振りで、ゆっくりと最後まで楽しみました。

少年時代、京都の吉田山の近くの叔父の家に下宿させて頂いていました。洋服の仕立職人だった叔父は、7人兄弟の末っ子で、私とあまり年が離れていなかったので、私は兄の様に慕っていました。

夜遅くまで、クラシック音楽を聴きながら、仕事に精を出している叔父の傍らで、耳をそばだてて、勉強机に向かうのが、苦学生の私の唯一の楽しみでした。毎晩、数々の名曲を聴かせていただけた事が人生の宝となり、なつかしい少年時代の、ほろ苦い思い出と共に、ビバルディの四季の中の冬の部分を初めて聴いた時の感激で身震いしたその音が、今も耳の底に、響いています。

次世代を担う青少年に、本物の音楽体験をさせてやりたい。趣味が高じて、町制50周年記念事業に、とうとう、田舎町に本格的な音楽ホールを作ってしまいました。東京のサントリーホール、カザルスホールを始め、大阪や京都の数々のホールのコンサートに出かけて廻って、足でかせいで研究を重ねたおかげで、東京や神戸から、CDの録音に来て下さる程の、音響の良いホールが出来ました。平成五年にオープンし、はや十年を迎える生涯学習施設の「アイリッシュパーク」。メインとなる「ガリバーホール」は、500人収容の小さな音楽ホールですが、その良さが認められ、真価を発揮してきています。

今年で8回目となる、日本フルートコンクール、日本国内はもとより、海外から駆けつけるフルーティスト達は、300人余り。4月30日のガラ・コンサートにはじまり、5月1日から6日迄、ガリバーホールは、フルートの音色一色に染まります。

当町には、江戸時代中期からの歴史を持つ曳山祭があり、祭囃子の練習が3月から行われ、夕方になると、街のあちこちから、笛、鉦、太鼓の囃子が流れ、音楽に馴染む素養は養われていた様ですが、この様な形で発展させる事が出来たことは、嬉しい限りです。折しも、5月3日は、大溝祭の5基の宵山が提灯をつけて町中を練り歩き、4日の曳山見物をも兼ねて、音楽の祭典を楽しみに来て下さるギャラリーも増えています。

全国少年少女合唱祭を主管させていただけた御縁で、高島少年少女合唱団も仲間入りさせていただき、物おじせずに、堂々と演じきった姿を目の当たりにして、ホールを作って良かったと、胸に、込み上げるものがありました。ガリバーが縁で、アイルランドとの交流も盛んになり、チーフタンズを始め、多くの音楽家が来日しましたし、高島町民も多くの人達がアイルランドの土を踏んでいます。人口7,000人余りの小さな田舎町に、3回もアイルランドの特命全権大使にお越しいただけるという幸運にも恵まれました。

地方の時代の今、町づくりのテーマ「一歩早く、先に立って、困難な事に挑戦し、知恵と工夫で、新しいものを創りだす」努力を続けたいと思っています。次の世代を担う、青少年の健全な育成をめざして。