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 町長職初当選の想い

印刷用ページを表示する 掲載日:2002年12月23日

町長職初当選の想い

宮崎県木城町長 黒木 傅

或る事情から平成3年4月に行われた町長選挙に立候補することを余儀なくされた私にとって、選挙の在り方を全く知らない恐怖よりも、候補者として名乗りを挙げて準備を進められている人物に対する私的な思いの方が大きなものであった。

その人は役場勤務時代諸々の部署において先輩として、又、上司として指導を受けてきた間柄でもあり、その人と相争うことは身上的に誠に忍びない気持ちであった。

前町長は議会議長からの転進で、5期20年の町政担当の期間4期目立候補の時1回だけ選挙を斗われ、あとの4期は何れも無投票で町長に就任された実績があり、私の選挙の相手方となられる方も一部議会議員さん達の手によって無投票による当選としての手筈が進められていたようであった。

長期に亘って町政を担当された前町長の跡を受けての町長選出であり、無投票での当選では不可ないのではないか、選挙を行い町内有権者の意志によって選出されるべきであると人々の考えもあって、元助役を勤めた経験のある私に当て馬としての役を振り当てたような感じである。

当時、妻を亡くし3年余り独り暮らしの生活の中で、町の町史編纂委員として編纂室の雑用を勤めていた私には、直接話しはありませんでしたが、私の本家にあたる弟のところには、連日電話があり、元助役まで勤めた身でもある兄貴は我が町の重大な状況を何と認識しているのか、兎も角対立候補として立候補するだけでも表明しろとの要望が烈しく困っている。独り暮らしの自由な身ではないか立候補だけでも引き受けたらどうかと、弟が我が家に来ての説得に乗り、遂に来春行われる町長選挙立候補の意志がある旨を公にし、直ちに町史編纂委員を辞任した。

早速、30戸余りある地区集落の皆さんにその意志を伝え、ご支援をお願いすると共に今後のご協力を依頼したのである。

町長選に立候補予定の相手方には、直接お逢いして事の経緯を説明し、事ここに至った以上は、お互い私心を捨て正々堂々と法に遵って選挙を行うことを誓い合ったのである。

しかしながら、実際に選挙への道に1歩足を踏み入れると次々に難問が続出し、なかなか前へは進めない状況であった。

相手方では、後援会の結成大会とか○○君を励ます総決起大会であるとかが、大々的に開催され町内の知名の士悉くが役員として名を連ねられており、中々の盛会であったと聞かされる、一体我が方はどうなっているのか、準備は出来ているのか、あれはどうか、これはどうかと毎日責めの言葉ばかり聞くと正に方策尽きるの思いがし、一体誰が無理矢理出るように言ったのかと、つい恨みがましい気になったものである。

しかしながら、男が一旦意を決して公言した以上、何とか頑張り通さなければと毎日毎日こつこつと準備を進めて行くことにしたが、幸いにして我が家に集まってくれたり何かと助言指導をしてくれる人々も多くなり、後援会事務所の設置、役員の選任、決起大会の開催など徐々にではあるが出来て来て告示の日を迎えることが出来たのである。

選挙とは、或る特定の公職者を選ぶ所定の事務である位の認識しかなかった私にとって、町長選挙に立候補するということは一大事業だったのである。当選という事より町長職を選挙、即ち有権者の選択による投票によって決めることが当初の目的であった筈が、愈々選挙戦に突入すると毎日事務所に来て励まして下さる皆さん、直接運動に拘わって飛び廻って下さる皆さん、事務所にあって投票予想を入念に点検している皆さん方の懸命な姿に接すると、是が非でも勝たなくてはと心に燃えるものが日増しに強くなって行った思いがする。

愈々投票当日、「出来る限りの力は尽くした。」「町政に対する自分の思いは述べた。」の充実感と、連日これだけ多くの方々が懸命に支援応援をして下さった感謝感激の気持ちとが相俟って、もう結果はどうでも良いような気持ちでもあった。

しかし、開票結果は大方の予想に反して我が方が勝ったのである。

その差、300票弱、相手方の後援会長である医院長が理事長をされている2つの福祉施設200票余りを確実票として持っていた相手にである。

町内著名の名士達が後押しされた候補者に、町内の名も無き人々の支援と励ますカが勝利したのである。

さて、初当選の感激とは別に、静かに想いを巡らせば最も町長という政治職に適さない性格の持ち主、また能力を有しない自分を思うとき、如何にして町民皆様に報いることが出来るのか様々な思いが頭の中を去来する。

私としては町長に就任するからには、常に公明正大、厳正公平を旨とし、町政に当たっては、虚心坦懐、八方破れの気持ちで何事にも接して行くこととし、

施策の重点は、

●将来の国民を育てる教育環境の整備内容の充実。
●基幹産業である農林業の振興状況を適格に把握しつつ施策をたてる。
●町民の住み良い環境、美しい環境作りと保全に努力する。
●高齢者福祉及び福祉事業の全般について充実をはかる。
●職員の資質向上及び新しい時代に即応出来る意識を高める為の研修の充実。
●常に健全財政を堅持し、事業の執行に当たっては細心且つ大胆に進めること。

を公約とし、其の事を常と肝に銘じながら、愚直に誠心誠意処していくことに、今なお変わることなくあと5ヵ月の任期を終えようと思っている。

我がふるさと木城町は、総合計画の指標「水と緑心豊かな住み良い町」のとおり、誠に山紫水明豊かな自然に恵まれ、町内学校で育つ子供達も誠に豊かな感性と優しさを具え健やかに育っている。

今、国の施策はもっぱら都市と地方が共生することにではなく、お互いに対立するような議論ばかりがなされており、将来の国家を担う心豊かな立派な人材は、地方にこそ、その場があることを一言申したい。