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 小さな町の日本一

印刷用ページを表示する 掲載日:2002年10月28日

宮城県瀬峰町長 山田悦郎

瀬峰町は、宮城県の北西部に位置し岩手県と境を接する栗原郡の南端にあります。本町は、人口約5,500人、面積29.28平方キロメートルで、宮城県でも下から数えて9番目の小さな町です。基幹産業は稲作を主体にした農業で、畜産や野菜などの組み合わせによる経営の複合化も進んでいます。私たちの町は昨年、町制施行50周年という大きな節目を通過いたしました。半世紀にわたる町の歴史を振り返り、町づくりにご尽力いただいた先人のご労苦にあらためて敬意を表しながら、次の節目に向かって新たな一歩を踏み出したところです。

右肩上りの時代が終焉して企業の倒産やリストラが相次ぎ、雇用も景気の動向も厳しい状況が続いています。マスコミの報道を見ても暗いニュースが多く、とかくうつむき加減になりがちでありますが、思いがけないところからホットなニュースが飛び込んできました。

昨年の11月16日に、東京都中央卸売市場食肉市場で開催された全国肉用牛枝肉(えだにく)【食用にする獣の、頭・内臓などを取り除いた骨付きの肉】共励会で、本町の鈴木秀一さんが出品した「福義号」が最高位の名誉賞(農林水産大臣賞)を受賞しました。審査後のせりでは、1キログラム15,612円の高値がつき同共励会史上二番目の価格で取引されました。BSEの影響で枝肉価格が低迷している時期のことで、せり場には一瞬どよめきが起こり、市場は久々に活気づいたそうです。

全国から349頭が出品された共励会で日本一に輝いたことは、鈴木さんはもちろんのこと苦労を共にしてきた町内の畜産農家にとっても大変名誉なことであります。また、史上二番目の高値がついたことは、BSE騒動で元気をなくしていた全国の生産者や流通業者の皆さんの励みにもなったことと思います。

瀬峰町には日本一の削蹄師がいます。本町の高橋家壽夫さんは、平成2年に東京で開催された「第33回全国牛削蹄競技大会」で優勝し、見事日本一の座を獲得しました。削蹄師の高橋さんは現在、認定農業者として町の農業の中心的な役割を担って活躍されています。当然、名誉賞に輝いた「福義号」の削蹄も高橋さんの手によるもので、日本一の削蹄師のお世話になった牛が、共励会で日本一になったことになります。

本町は特に「日本一の町づくり」を標榜しているわけでもありませんし、畜産の先進地といわれるような実績があるわけでもありませんので、町民の方々のひたむきな努力による快挙に心からの拍手を送りたいと思います。

小さな町の日本一は、町民の皆さんに勇気と自信を与え、今後の町づくりの励みにもなります。日本一という頂点を極めることは容易なことではなく、お2人ともそれぞれの道の頂点に立つまでには、大変なご苦労があった様でありますが、地道な努力こそが地域づくりの原点ではないかと思います。「町民1人1人が輝くことによって瀬峰町全体が輝くような町づくり」を目指して、今後とも懸命の努力をしていかなけれならないと思っています。

私は昭和57年に34歳で町議会議員に初当選して以来、連続4期15年間の議会活動を経て平成9年49歳で町長に就任いたしました。現在2期目ですが、町政に関わるようになってから今年でちょうど20年になります。町長に就任以来、様々な行政課題に取り組んできましたが、「平成の大合併」は町の将来を左右する極めて重要な課題で、これまで取り組んできた課題とは質の違う非常に大きな行政課題であります。「平成の大合併」は自主的な合併が建前になっておりますが、自主財源の乏しい小さな町からすれば推進のあり方については疑問に思うことも度々です。

しかし、平成17年3月という期限が迫っています。首をかしげている暇はなく、市町村合併という大きな潮流のなかで、町民の幸せを願いながら町民の皆さんとともに合併問題の方向性を見出していかなければならないと思っています。