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 オンリーワンのふるさとづくり

印刷用ページを表示する 掲載日:2002年7月29日更新

鹿児島県町村会長 輝北町長 有留忠男

ふるさとづくりの仕事は幅広いですが、大きく分けて3つのポイントが考えられます。

1つには道路の整備や土地改良、産業の振興等、物の基盤づくり

2つ目は保健、医療、福祉の充実といった体の基盤づくり

3つ目は教育、文化の振興や誇りのもてる地域づくり等心の基盤づくりをすることだといえます。即ち、物、体、心の基盤づくりが三位一体となった時に、すばらしいふるさとが構築されるものと考えます。

私は、40年余り生まれ育った故郷を離れ、県内外で生活をしてきましたが、「ふるさとは遠きにありて想うものなり」と言われますが、ふるさとを離れてみますと、子供の頃遊んだ山や川、朝早くから日が暮れるまで農作業に精出していた親の姿を思い出すことでした。

わが故郷は鹿児島県の東部、大隅半島の北西部に位置しており、典型的な中山間地域で、産業の中心は農業でありながら土地改良が後れており、生産条件が悪く、労多くして報いの少ない状態でした。医療、保健にしても決して恵まれていたとはいえません。教育、文化面においても準僻地指定地域で交流が少なく、立ち後れていたことは否めない状態であり、自分の故郷を胸を張って誇り得るものがなく寂しい想いをしていました。たまに故郷のことが新聞に掲載されると、その嬉しさと喜びは一入でした。

平成元年、縁あって故郷にUターンし、町助役として行政に携わることになりました。

平成4年からは町政の舵取りとしての重責を担わせてもらっているところです。

条件的には恵まれていないが、緑豊かな美しい自然、澄んだ大気、人情味豊かな町民性は、新しいふるさとづくりの大きな資源になり得ると考え、「陽転の発想で誇りある郷土」をスローガンにナンバーワンを狙うより、オンリーワンの町の創造をめざして取り組むことにしました。

たまたま環境庁のスターウオッチングで、平成3年の冬空から4季連続日本一星空がきれいに見える町に認定されたのを機会に、町民にロマンと夢を与え活性化に生かそうと考え、町のシンボルになる独創的なオンリーワンの天文台(天球館…表紙写真)の建設を計画し、平成七年、難工事を経て見事に完成しました。

プロポーザル方式で設計委託した建築家の崎正治さんは、この作品が評価され、日本建築家協会の新人賞に輝き、また平成13年には世界最古の伝統と格式ある王立英国建築家協会の受賞と日本人では7人目になる同協会の名誉会員に認定されるなど世界的に評価されたことは、発注者として大きな喜びであります。今や天球館はわが故郷のシンボルになっており、教育、文化面はもとより情報発信の核として町の活性化に大きく寄与しているところです。本年10月には「星空の街、あおぞらの街」全国大会が本町で開催されますが、これには皇族もご来臨される予定になっており、この上ない喜びであり光栄に思っているところです。

また、農業地域として3町にまたがる4千ヘクタールの畑かん営農による食糧供給基地づくりという大きなプロジェクトが取り上げられ、その水源になるダムが本町に建設される計画になっていましたが、40数戸が湖底に沈むことから住民の強い反対で計画は暗礁に乗り上げておりました。この解決が首長就任後の最大の課題でしたが、18年目にしてようやく工事着工の同意が得られ、以後工事は順調に進み完成も間近になっており、21世紀にはばたくオンリーワンのふるさとの具現化を楽しみにしているところです。