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 はるなの四季

印刷用ページを表示する 掲載日:2001年6月25日

群馬県榛名町長 石井清一

町名の由来になっている榛名山は、群馬県の中西部に位置し、赤城・妙義と共に上毛三山として古くから多くの人に親しまれています。

榛名富士を頂点に南麓に広がるわが町は、農林業を基盤として発展してきました。梅・梨をはじめとする果樹や畜産、椎茸などの栽培を中心に、県下でも指折りの農業生産を誇ります。

また、一方では1000年余の歴史を有する榛名神社、春夏秋冬を通じて多くの人々に親しまれている榛名湖、榛名富士に代表される観光の町でもあります。

湖畔には、天然温泉も湧出し、町営宿舎『ゆうすげ元湯』もあります。豊かな自然と様々な表情をもつ榛名の一端をご紹介します。

『春』 榛名の春は、特産の梅の開花にはじまります。約12万本の梅の木が栽培され全町に白とピンクのカーテンを張り巡らした如く咲き薫るさまは壮観です。梅に次いで桜さらに桃・プラム・梨の花と、夏まで町内全域から花の絶えることはありません。

特に今年は、梅の開花が遅れたためそれに次ぐ花が間断なく綻びはじめ、まさに百花繚乱、これに加えて平成12年群馬花トピアコンクール最優秀賞に輝く町長寿会の花づくり運動が全町くまなく繰り広げられ、真冬の一時を除いて、“湖とくだものの里”榛名は花の里でもあります。

『夏』 榛名の夏は男性的です。特に雷雨は豪快です。榛名山上空は、日本でも有数の雷の発生地といわれています。上州名物といわれる所以です。カンカン照りの昼下がり、榛名山上の紺碧の空に、突如真っ白の入道雲がモクモクと立ちのぼる光景は圧巻です。そのうちに一天にわかにかき曇り、稲光りと共に雷鳴轟き、篠突く雨が降りかかります。小半時もするとやんで、もとの青空に戻り、それまでの蒸し暑さを忘れさせてくれます。

特に、榛名湖畔での夕立ちは雷鳴が周囲の山々にこだまして、腹の底に響きます。また、榛名山の西方浅間山から碓氷峠にかけて、雷雲が発生した時は、異常に雨の降り出すのが早く、山麓の村々では、峠のさんぞく雨といっておりました。刈り取った麦を3束とたばねる間がないからだとか、全身ずぶ濡れにして着替えを余儀なくされるから、身ぐるみを剥ぐ山賊になぞらえて、そう呼ばれたとかいわれています。

『秋』 榛名の秋は山頂から徐々に下ってきます。桜前線が麓から山の上の方へ向って行くのと逆です。

8月土用を過ぎると榛名湖畔に吹く風はなんとなく秋めいてきます。赤トンボが群をなして飛び交い、秋の草花が咲き競います。

明治初期から栽培され、県下一の生産量を誇る秋の味覚の王者、梨も熟しはじめます。8月最後の日曜日、榛名湖畔での「梨まつり」は大変な賑わいを見せます。9月下旬ともなれば榛名富士の山頂は色付きはじめ、湖畔では雨が降ればストーブがなくてはなりません。

『冬』 高崎市の烏川(からすがわ)畔から榛名山を眺めるとき、その山容は朝日に映え、夕日に照らされ、ことさら冬季は紫色に輝きます。まさに山紫水明とはこのことかと合点がゆきます。榛名山を望む県内の各学校の校歌にこの情景がとり入れられ、唄われているのもうなずけます。

正月ともなれば山頂の湖は、結氷しワカサギの穴釣りやスケート、氷上ゴーカートを楽しむ人々で賑わいます。山麓の村々では新春の伝統行事「どんどん焼き」が子供たちの最高の楽しみでした。正月の松飾りを集め、さらに竹や粗朶で小屋を組み、小正月の朝燃やして地域の安泰・無病息災、五穀豊穣を祈る古くから伝わる行事です。小屋づくりの共同作業を通じて子供たちは鉈や鋸の使い方を覚え、山仕事や農作業の基本を学んだものでした。

この時期上州名物の空っ風も吹き荒れます。なんといっても赤城颪が有名ですが、榛名山から高崎方面に吹く風もこれに負けません。この冷い風の中でも榛名山麓の梅の花は、春に向かって蕾を膨らませています。