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 「町民参加の町政」をさらに推進するために

印刷用ページを表示する 掲載日:2000年3月6日

北海道上磯町長 海老澤順三

緑の山なみと稔り豊かな田畑、清い流れをもつ川ときれいな海に囲まれた美しい田園工業都市づくりをめざしながら、ふれあいを大切にし、思いやりに満ちた、さわやかでいきいきした行政を実現するため、上磯町長という重責を担わせていただいてから、20十数年が経過しました。

昭和54年には、人口も3万人を超え、これに伴う義務教育施設の整備や道路、下水道といった生活環境施設の整備、農業、水産業の振興、企業誘致などにより、住んでてよかったと町民だれもが思えるまちづくりを「町民参加の町政」を政治哲学として、進めてきました。

2000年は、20世紀の締めくくりの年であり、また、21世紀の扉を開く年でもあります。いよいよ4月からは、将来の超高齢化社会を支える仕組みとしてスタートする介護保険制度や地方公共団体の自主性・自立性を高め、住民に身近な行政は住民に身近な団体が担っていくことを基本とする地方分権が推進され、私たち行政の自主性が問われるなど、自らの責任で自らの仕事に取り組まなければならないというかつて経験したことのない厳しい状況におかれているところであります。

さて、昨年の暮れに、以前から公私ともにたいへんお世話になっている方で、ご自身も公務員であった知人から、その方の持論であるユーモアある行政についての所感をまとめた1冊の本をいただきました。早速読んでみたところ、その内容は、公務員の意識や生き方などを楽しくそして辛口で述べたものであり、なるほどとうなずくことがたくさん書かれてありました。

この本の中で、著者の友人は、私たち公務員を「おかたい」ということばで表現し、かねてからマイナスイメージばかりを抱いているとのことでした。

「おかたい」の「お」は遅い、「か」は文字どおり固い、「た」は縦割り、「い」は威張るの頭文字をとったものであり、まさしく住民は、私たちをこのようにみているものかとつくづく感じました。もちろん、公務員は、仕事を進めるにあたって、のんびりと杓子定規に独善的な態度で木を鼻でくくるような対応を日常していないことは、私も十分に認識していますが、民間企業の方からそのように言われるとなかなか即座に否定できないものもあるなと、内心忸怩たるものがありました。

この「おかたい」ということばを逆手に取り、能率的で柔軟な姿勢をもち、職場での横の連絡を密にし、住民と目線を同じくして物事を進め、常に「おかたい」仕事をしていないかどうかを自問自答しながら仕事に取り組む意識を職員に徹底させたいと思っております。

これからの行政は、持っているすべての情報を公開し、住民と共有する事によって、共通の価値観を見出すことが必要になります。

そして、住民1人ひとりから発信された情報に対し積極的に耳を傾けながら、刻々と変化する状況を適切に把握し、政策に反映させることが求められます。

さらには、新しい基準をつくりあげなければならない時代だからこそ、前例を踏襲することができません。従いまして、いままで以上に正確な情報を集め、それを分析、判断し、迅速に事務事業を実施するには、職員の意識を改革することが、多様化する住民要望に的確に応える第1のキーポイントになると思っています。

今後も職員と一丸になって、発想を転換しながら、「町民参加の町政」を推進するため、町政の主人公である町民とともに知恵を出し合い、町民一人ひとりが真に「うるおい」と「やすらぎ」と「豊かさ」を実感できるまちづくりを進めるため、新しい世紀に向けて精一杯の努力をしなければならないと決意しているところであります。

そのためにも、先日の町村週報の山本兼太郎さんの龍占いにあるように、鯉が龍門の滝にたどりつき、登竜門を通り抜け飛龍となるための努力、情報、決断を座右の銘とするばかりでなく実行していかなければならないと深い思いにかられております。