和歌山県町村会長 南部町長 山崎繁雄
公共下水道事業は、南部町の最大の課題であるとして、平成8年より事業に着手。農村地域の2集落は、農業集落排水事業で完成、平成10年、11年と相次いで供用開始、順調に加入者が増えつつある。残るは市街化区域を持つ旧南部町全域を公共下水道事業で実施することである。
公共下水道事業の成否は、住民の本事業への理解と、どれだけの家庭が加入してもらえるかということにつきると思いますが、事業での最大の課題は、終末処理場を計画通りの最適の場所に建設できるか否かということでありましよう。面積の小さい我が町では、人里離れた所に処理場をつくることはできない。
職員達の計画した予定地は、終末処理場としては最も効率的で、理想的な場所ではあるが、いかにせん人家に近い。私から見れば実現性の薄い計画といわざるを得ない。私は計画の変更を含めて、再検討を指示したが、なにしろ我が町の職員は鼻息があらい。此の場所をおいて他に考えられないと、言うのである。案の定、予定地周辺の住民は猛反対、反対同盟までできるという状況となり、正に前途多難。
職員は連日連夜精力的に折衝を重ねて来たが、職員の手に負えない事態となった。
私の出番である。妙案などある筈がない。只幸運にも、時を同じくして旧役場庁舎に隣接する県道拡幅を県営都市計画事業で実施されることとなり、庁舎の一部をカットしなければならないことになっていた。旧庁舎は、外観は綺麗だが、築後40年近い、駐車場もせまい、しかし当初は、役場の移転など、毛頭考えておらず、改修でもすればなんとかなると考えてもいた。もともと私は、役所など立派なものは必要ないという主義である。
そのような時の、終末処理場問題である。私は反対する住民の素朴な気持は、良くわかる、衛生的で、綺麗な処理場をと説明しても納得されるものではないと、ここはウルトラC以外にない。役場を終末処理場に併設することにしてはと考えるに至った。大げさに言えば、政治生命をかけて終末処理場に役場を併設することを提案する以外に解決の道なしと考えたのである。正に独断専行、議会にすら、充分な相談もせずに、地元の皆様との話し合いの場で役場を終末処理場に併設することを提案したのであります。地元の皆さんも、まさか、役場を併設するとは、夢にも考えられなかったのでしょう、次第に反対論は薄れて、慎重に検討されるところとなり、紆余曲折がありましたが、地元同意を得ることができ、議会も賛成して頂けることとなりました。役場は平成11年10月完成、隣接地に終末処理場はその名も“浄化センター”として建設工事が進められております。私は役場庁舎が町のシンボルになるとは考えておりませんが、浄化センターとセットになれば、面白い町のシンボルになるのではと、ひそかに期待している昨今である。
近くに高速道路のインターチェンジもできる、隣村の南部川村は、うめ課のある梅の村、ユニークな梅振興館もある。我が町も梅産業を中心とした、活性化された町でもある。県下一のリゾートホテルあり、大繁盛の国民宿舎、紀州路みなべもある。数年後に高速道路が供用開始されるが、断じて車が通過する町になりさがりたくない。
梅の花や景勝地を、そして、セットになっている役場庁舎と近代的な浄化センターをじっくり見て頂き、豊かな心で憩いの一時を楽しんで頂けるような町にと願っているが、思い上りと言われるかもしれません。
来遊の価値あり、和歌山県南部町(みなべ)。