京都府笠置町長 山本 篤志
笠置町(かさぎちょう)は、京都府の最南端に位置し、木津川の清流と豊かな山々に囲まれた町です。人口は約1000人。「府内で最も人口の少ない自治体」ですが、ここには大都市にない無限の可能性と、住民の温かい熱量が満ちています。生まれ育った故郷を次の世代へ確実につなぐため、私は「希望を生むまち」というキャッチフレーズを掲げ、日々町政に邁進しています。本稿では、笠置町が持つ尽きない魅力と未来への挑戦をご紹介いたします。
1.自然を遊び尽くす「アウトドアの聖地」と駅から5分の奇跡
町の中心をダイナミックに流れる木津川は最大の観光資源です。広大な河川敷の「笠置キャンプ場」には年間約10万人ものファンが訪れ、カヌーやキャンプを楽しんでいます。
また「ボルダリングの聖地」としても注目される、川沿いの巨石群は国内屈指の天然エリアです。何より「駅から5分の場所にあるボルダリングエリア」は世界中どこを探しても笠置町にしかない強みです。この環境から生まれた映画『笠置ROCK!』には多くの町民が制作に関わりました。主人公たちが目の前の岩壁に挑む姿は、人口減少という大きな壁に立ち向かう私たちの姿そのものでした。
2.歴史のロマンと四季の絶景が交差する「笠置山」
町の象徴「笠置山」は、かつて修験道の聖地として栄え、山内には巨大な弥勒仏の磨崖仏や後醍醐天皇ゆかりの「元弘の乱」の史跡が今も佇んでいます。一歩足を踏み入れると神秘的な空気に包まれます。
また、関西屈指の景勝地でもあり、春は桜、夏は青もみじ、秋は紅葉に染まります。晩秋から冬の早朝、特定の気象条件が揃ったときに見られる「雲海」は息をのむ美しさです。眼下に広がる白い霧の海と、朝日に照らされる山の姿は一生残る感動を与えてくれます。
3.伝統の継承と、新たな価値を生み出す「食のイノベーション」
旅の醍醐味である「食」では、旨味が詰まった「キジ釜めし」などの伝統料理を守る一方、ジビエの利活用というイノベーションを進めています。
深刻な農林業被害に対し、当時の大学生3人組が笠置町で起業。「被害」を地域の「資源」へと転換する挑戦を始めました。新鮮なジビエ肉のメニュー開発や特産品製造を推進すると共に、生命の尊さをこどもたちに伝える食育活動も行うなど、今では笠置町の大きな「宝物」となっています。
4.人口1000人だからこそ実現できる「顔の見えるぬくもりの町政」
人口約1000人という規模を、私は「最大の強み」と捉えています。全世帯の顔が見え、住民の声に直接耳を傾ける「究極の対話型町政」が可能だからです。
その象徴が、全世帯への「防災タブレット」の配布です。高齢化が進む当町において災害時の情報伝達は命に関わる課題です。お年寄りでも直感的に操作できる特製タブレットを全戸へ届けました。しかし本質はデジタルだけではなく、「操作がわからないときは職員が出向いて説明しよう」との掛け声のもと、手足を動かすアナログな対応を徹底し、人と人の顔が見える信頼関係を大切にしています。
5.「KASAGIこのゆびとまれプロジェクト」で未来を拓く
私たちは、外部の知恵や力を呼び込む「関係人口」の創出にも注力しています。その中核が『KASAGIこのゆびとまれプロジェクト』です。「笠置町のために何かしたい」「スキルを活かしたい」という外部のクリエイターや学生を募り、共に課題解決や魅力発信を行っています。「希望を生むまち」をキーワードに多様な人材が集まり、新しい化学反応が次々と起こっています。
「こどものときに見た美しい故郷の記憶は絶対に消えない。その素晴らしい記憶を、次の世代のこどもたちにしっかりとつなぎたい」
私の活動の根底には、このシンプルな願いがあります。人口減少を「全国最先端の課題」と捉え、小さくとも輝き続けるモデルを証明し続けます。懐かしくも常に新しい挑戦が芽吹く笠置町を感じにお越しください。