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いのちのかおりが、まちをつくる。上士幌町

印刷用ページを表示する 掲載日:2026年7月6日更新

北海道上士幌町長 竹中 貢北海道上士幌町長 竹中 貢​​

 窓を開けると、土と家畜の匂いが広がります。森に入ると、樹々と大地の香りに包まれます。これらは単なる自然の気配ではなく、私たちの暮らしを支え、冬を暖め、未来へとつなぐエネルギーです。上士幌町は、このような「いのちのかおり」に満ちた、循環する力を持つまちです。

 北海道十勝の北部に位置する上士幌町は、広大な自然環境と農業を基盤に発展してきた人口約4,700人の町です。日本一広いナイタイ高原牧場に象徴される雄大な景観や、全国から多くの来訪者を集める熱気球イベント、鉄道産業遺産であり季節によって姿を変えながら朽ちていくタウシュベツ川橋梁など、地域資源を活かした観光振興を進めてきました。また、ふるさと納税を契機として多くの共感とつながりを育み、「関係人口」の創出にも積極的に取り組んできました。

 さらに、医療・福祉・教育といった生活基盤の充実に加え、地域コミュニティの再構築や関係人口の拡大を図ることで、安心して暮らし続けられる環境を整備しています。あわせて、農業の高度化や観光の高付加価値化、新産業の創出により、地域経済の自立を進めてきました。

 これらの取組は全国的にも高く評価され、令和2年には第4回ジャパンSDGsアワード内閣官房長官賞を受賞し「SDGs未来都市」にも選定されました。また令和4年には、第1回脱炭素先行地域に選ばれ、地域資源を最大限に活用したまちづくりが評価されています。

 本町の特徴的な取組の一つが、農業・酪農から生じる家畜ふん尿を活用したバイオマス発電です。地域内で発生する資源をエネルギーとして循環させることで、町内で消費する電力の100%を再生可能エネルギーで賄う体制を構築し、電力の地産地消を実現しています。この事例は、環境と経済の好循環を生み出していることから、サーキュラーエコノミー(循環経済)のモデルとなっています。

 脱炭素や再生可能エネルギーでは、バイオマス発電や太陽光発電の普及を進めています。役場の改修や町民ホールの新築では、太陽光発電を主電源とし、木質バイオ暖房や井水冷房を導入することで、フルZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化をめざし、カーボンニュートラルなまちづくりを進めています。

 さらに、次世代技術の導入にも積極的です。レベル4の自動運転バスの実証運行や、全国初となるレベル3.5ドローンを活用した物流実験などを通じて、地域課題の解決と新たな価値創出を図っています。「不安・不便・不利」といった地方の課題に対して、デジタル技術の活用で都市と地方の格差是正にも取り組んでいます。

 移住・定住施策や子育て支援にも力を入れています。医療費や保育料の軽減、教育環境の充実など、若い世代が安心して暮らせる環境づくりを着実に進めてきました。その結果、令和2年の国勢調査では、65年ぶりとなる人口増加を達成しました。

 「脱炭素」「SDGs」「デジタル」は国際社会が抱える重要課題であると同時に、本町が地域資源として強みを持つ分野です。これら三位一体を成長戦略として位置づけ、地方創生に取り組んでいます。

 こうした流れの中で、本町は今年度、「ふるさと住民登録制度」のモデル自治体として、新たな地方創生の段階へと踏み出しました。デジタル技術を活用した登録制度により、地域との接点を日常的に持ち続けられる仕組みを整備するとともに、観光、農業体験、ボランティアなどへの参加を通じて、関係人口が主体的に地域づくりに関わる環境を創出していきます。

 上士幌町はこれまでも挑戦を続けてきました。そして今、「ふるさと住民登録制度」という新たな仕組みを通じて、人と地域の関係を再定義し、持続可能な地域社会の実現に向けて歩みを進めています。いのちの営みから生まれるあらゆる価値を次の世代へとつないでいくために、本町はこれからも循環する力を信じ、全国に先駆けた地方創生モデルの確立に挑戦し続けます。