長崎県川棚町長 波戸 勇則
川棚町は、長崎県のほぼ中央部に位置し、大村湾に面した自然豊かな町です。穏やかな海と緑深い山々に囲まれ、四季折々の風景が私たちの暮らしに寄り添っています。朝、湾を渡るやわらかな光を眺めると、この町に暮らしていることの幸せをしみじみと感じます。
川棚町は決して大きな町ではありません。しかし、その小ささこそが魅力でもあります。町を歩けば顔見知りに出会い、声を掛け合い、自然と会話が生まれます。子どもから高齢者までが支え合い、助け合いながら日々を過ごしている姿は、まさに笑顔あふれる町の姿そのものです。
川棚町といえば、まず思い浮かぶのが大村湾の穏やかな景色です。波静かな内海は、昔から人々の暮らしを支えてきました。夕暮れ時、海面が茜色に染まる光景は、何度見ても心を打たれます。湾を渡る風はやわらかく町全体をやさしく包み込んでいるようです。
私の幼少期の思い出も、この豊かな自然とともにあります。休みの日には、海、山、川を遊び場にして、夕方まで夢中になって駆け回っていました。魚釣りをして、クワガタを探し、泥だらけになって笑い合った日々。あの頃の町には、子どもたちの声と笑い声があふれていました。しかし今、同じ場所を歩いても、外で遊ぶ子どもたちの姿は少なくなりました。時代の流れとはいえ、あのにぎやかな笑い声が聞こえなくなったことに、少し寂しさを覚えます。それでも、いつか再び子どもたちの声が響く町になっていくよう努めていきます。
また、この町は戦時中、海軍の工廠が置かれた軍需の拠点として栄え、最盛期には人口、三から五万人を数えたと言われています。その歴史を今に伝えるのが、大村湾に浮かぶ片島に残る片島魚雷発射試験場跡です。旧日本海軍の魚雷発射試験が行われた施設で、コンクリート造りの桟橋や発射台跡が今も残っています。静かな海に囲まれた遺構に立つと、平和の尊さを改めて感じます。過去の出来事に思いをはせるとともに、今こうして穏やかな日常を送れていることに感謝しています。
そして、川棚町の誇りは豊かな特産品にもあります。太陽の光をたっぷり浴びて育つ小串トマトは、甘みと旨味、酸味のバランスがよく、食卓を鮮やかに彩ります。みずみずしいひと玉には、生産者の丹精と愛情が込められています。また、第十回全国和牛能力共進会で内閣総理大臣賞を受賞した長崎和牛の産地であり、きめ細かな脂身とやわらかな肉質が特徴で、特別な日の食卓を豊かにしてくれます。さらに、大村湾で育まれたナマコは、身がしょっぱくなく、非常にやわらかく、特有のコリコリ感と深い旨味が特徴の冬の高級食材です。これらの特産品は、川棚町の自然の恵みと携わる方々の努力の結晶なのです。
さて、私事ではありますが、六十歳を過ぎたあたりから、健康のありがたさをいっそう実感するようになりました。そこで、徒歩で通勤し、一日八千歩を目標に歩いています。川棚町の中心部は比較的平坦な道が多く、海辺や町なかを無理なく歩けるのもありがたいところです。毎日行き違う車の流れとすれ違う方々と交わす挨拶もまた、自然と笑顔を生みます。
歩いていると、車では気づかない小さな発見があります。道端に咲く草花、田んぼで作業をする人の姿、遠くから聞こえる工場の音。何気ない日常の風景が、ゆっくりと胸に染み込んできます。

自然の中で遊んだ幼い日の記憶、歴史を物語る遺構、そして今も変わらぬ人の温もり。川棚町には過去と現在が静かに息づいています。これからも健康に気を配りながら、この町の風景を一歩一歩、歩き続けたいと思います。
穏やかな海と山に抱かれた川棚町。小さな町ですが、そこには大きな歴史と豊かな暮らしがあります。人と人とが支え合い、自然とともに生きるこの町が、これからも笑顔あふれる町であり続けることを願っています。
ぜひ一度、お立ちよりください。