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共創で開く地域の未来

印刷用ページを表示する 掲載日:2026年3月23日更新

岡山県美咲町長   青野 高陽岡山県美咲町長 青野 高陽

 美咲町といえば、「たまごかけごはん(TKG)」―。棚田米と町内産の新鮮なたまご、シソやジンジャーなど4種類の専用醤油と焼きゴマが人気の秘訣です。町出身で日本初の邦字新聞を創刊した岸田吟香(「麗子像」で知られる洋画家・岸田劉生の父)が愛好したとされることにちなみ、TKG専門店「食堂かめっち。」が連日にぎわいをみせています。

 美咲町は岡山市から車や汽車で北に約1時間のところにあり、人口12,500人。平成17年に3町が合併した町で、中国山地の山あいにある典型的な中山間地域です。

 令和2年の国勢調査では人口減少率が9.6%と岡山県でワーストになりました。そこで町は人口減、歳入減を前提に地域の新たな社会づくりをめざす「賢く収縮するまちづくり」を振興計画や行財政改革大綱で打ち出し、大胆な施設の集約に乗り出しました。

 約7割を国がみてくれる合併特例債の発行期限(令和6年度末)をにらみ、5年度以降、49施設83棟(延床面積計52,000m²)を除却したり売却。ハコモノを取り壊し、機能をまとめていきました。

 例えば、町中心部に昨年5月オープンした多世代交流拠点は、役場、公民館、図書館など6つの機能がある複合エリアで、建設前に比べ利用者数は公民館は7倍、図書館は4倍、直売所の物産センターの売り上げは3割、それぞれ増えました。

 旧旭町の小学校跡には、町総合支所、図書館、子ども第3の居場所、診療所、多目的ホールなど8つの機能を集めました。いずれも生活に必要な機能を集めることで住民の利便性を高めるとともに、維持管理費の低減につなげていきます。

 令和5年には岡山県下に先がけて小中一貫9年制の義務教育学校「旭学園」、同6年には「柵原学園」を相次ぎ開校させました。放課後は住民ボランティアが学習をサポートし、第3の居場所や児童館で遊んでいます。

 同時に進めたのは、地域運営組織「小規模多機能自治」です。自治会の枠を超え町内13地区で、いわば“むらの困りごと解決隊”をめざしています。まずは住民全員アンケートの質問づくり、配布、回収、集計、分析をし、結果をもとに地域みらい計画をつくり、町が小規模多機能自治組織として認定しています。

 アンケートの対象は小学校4年生からという地域も出てきました。回収率は80%~90%台になり、パソコンが必要になる集計からは子育て中のお母さんや学生が加わってきます。

 「地域の困りごと」でどこも上位に挙がる草刈りでは、より安全に草刈りができる住民を増やそうとイベント形式の「草刈り王選手権」が開かれたり、独り暮らし高齢者の安否確認のための「黄旗運動」、地域住民と小学生がいっしょに空き家の片づけといった活動が行われるようになり、最近は小学生からも「しょうきぼたきのうじちで…」という言葉が聞かれるようになりました。みけんにしわを寄せて地域の未来を嘆くのではなく、人の力と地域の絆で「地域力」が上がっていることを実感しています。あえて「東京ではできないこと」をさらに進めていこうと考えています。

 かつて視察先としてはまったく無縁だったこのまちにも令和5年以降、国内外から義務教育学校や公共施設マネジメントに約400件の視察がありました。特に公共施設のダウンサイジングはどこも必要性はわかっていながらなかなか進まず苦慮されていることを痛感します。

 人口減少率が岡山県でワーストだった本町が令和6年にいわゆる「消滅可能性自治体」から脱却し、一時は出生率が2.23を記録、「子育てにおすすめのまち」といったネットの全国ランキングでも3位や4位で紹介されるようになりました。「賢く収縮」は決してネガティブな取組ではなく、将来を見据え、まちのあり方を人のあり方に合わせていく未来に向けた反転攻勢です。“お金で人を釣る”単なるサービス合戦ではなく、こどもたちに過度な負担を残さないことも大切な「こども応援」だと信じています。