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消滅してたまるか!「山・川・人」資源活用の挑戦

印刷用ページを表示する 掲載日:2025年9月1日更新

新潟県阿賀町長 神田 一秋新潟県阿賀町長 神田 一秋​​

 平成17年に東蒲原郡4町村が合併し、952.89km²と広大な面積の「阿賀町」が誕生して20年が経過しました。人口は15,448人から8,873人に減少、出生数は78人から20人に、合計特殊出生率は1.49から0.90になり、加えて高齢化率は51%を超えています。さらに社人研の2050年推計人口3,802人、人口戦略会議からは「消滅可能性自治体」として公表されました。人口減少は、「県立津川病院」「県立阿賀黎明高校」など、町に必要不可欠な県の機関の存続をも脅かし、私はその状況にかつてない重圧も感じています。これら極めて厳しい将来予測を直視し、これからの10年が正念場との認識で「若者が残る、戻る、選ぶ」町となるよう日々挑戦しています。

 町のこどもたちは「この町」が好きです。そうした純粋な思いを持ち続けてくれることが町の将来につながります。めざすは「子育ては阿賀町」の浸透です。「こども医療費」「ゼロ歳児からの保育料」「小・中学校給食費」「放課後児童クラブ」などは無償とし、さらに「1歳時及び小学校、中学校入学時の祝い金」「妊産婦検診の交通費助成」「不妊治療費助成」「無痛分娩助成」「出産時の宿泊費助成」等々を実施しています。

 教育の面では、小学校3校、中学校2校がありますが、18台のスクールバス運行、教室の空調更新などに加え、全小・中学校の体育館に空調設備を整備しました。学校行事、部活動、そして、いざという時の避難所にもなる体育館が「快適に活動できる場になった」と喜んでいただくことはうれしいことであります。

 当町は94%を山林が占め、人工林が113km²、天然林が405km²と豊富な森林資源があります。林業は、昭和50年代からの木材価格低迷により衰退の一途をたどり、その技術の継承も危ぶまれます。山を所有していても極めて安価に売買され、無秩序に木が伐られている実態があります。それなら、この町で木質バイオマス発電所をとの思いに至り、今、民間事業者による計画が進行しています。「伐って、使って、植えて、育てる」めざすところは循環型林業の復活であります。

 町の中央を流れる大河「阿賀野川」、そこへ注ぐ幾筋もの清流。この水を利用した新たな産業と観光の活性化を図りたい。川好きの私は、長年そうした思いを持ち続けてきました。最近、国内数カ所でサーモン内陸養殖、フィッシングパークなどを経営している素晴らしい方と巡り会いました。今まさに同様の施設を阿賀町に整備すべく、地元漁協と現地法人を立ち上げ、許認可の事前協議段階にあります。この施設が無事完成し、町の産業育成、観光客の誘致に一役買ってくれることを大いに期待しています。

 人口減少は空き家を生み、すでに1000棟を超える数となっています。これも資源です。全国古民家再生協会との連携協定により、黒光りした柱・梁などの部材を移築し、新たな命を吹き込む取組も始まりました。

 県立高校存続のために町営温泉の宿泊棟を寮にリニューアルし、現在は20名の「教育留学生」が入寮しています。さらに町では「学習塾」も運営し、学生の学習をフォローしています。これらのスタッフは、主に地域おこし協力隊の皆さんであります。他にも町では各分野で地域おこし協力隊を積極的に募集、採用してきました。任期終了後、「パン屋」「駄菓子屋」「塾の先生」「農業・観光」など、各人が新たな道を歩み、町に新鮮な風を吹き込んでいます。「自分がやりたいことに挑戦できる阿賀町」、今後さらにその発信を強化しなければなりません。

 これらは全て「人」です。私自身、多くの人とつながり、刺激を受け、悩む日々にあっても時に楽しませていただき、今日があります。磐越自動車道4車線化、国・県道の整備促進などの要望も続けてきましたが、ようやく動き出しました。私は、資源を活用し、若者が働ける職場を作り、知恵を出し合い、産業に育て、元気で、将来に光明が見える阿賀町をめざします。

 阿賀町は決して消滅しません!