栃木県高根沢町長 加藤 公博
今年の4月下旬、高根沢町の職員から「お誕生日おめでとうございます。」と言われ、封筒を渡されました。一体何が入っているのかと、若干の戸惑いと期待を込めて開封したところ、入っていたのは、「介護保険被保険者証」。少しだけがっかりしたことは職員には秘密です。
私も65歳となり前期高齢者となりました。平成25年4月に町長に就任したとき54歳で現在3期目となり、高根沢町とともに歴史を歩んできたことを改めて実感した出来事でした。
高根沢町は、栃木県のほぼ中央に位置し、県都宇都宮に隣接しています。東京からおよそ100kmの距離にあり、町の西側を国道4号とJR東北本線が縦断し、アクセスも良好です。町の東側は八溝山系の丘陵が南北に連なり、本町の地域振興の核となる「道の駅たかねざわ 元気あっぷむら」があります。西側には建築家として世界的に有名な隈研吾氏が手掛けた「宝積寺駅舎」や「ちょっ蔵広場」があり、町の象徴的な建物として人気のスポットとなっています。
令和元年に行われた天皇陛下の皇位継承に伴う重要祭祀「大嘗祭」では、悠紀地方(東日本)の斎田に選ばれた高根沢町の水田で収穫した新米「とちぎの星」が献上されました。古くからの米処で、「たんたん田んぼの高根沢」と町の歌にあるように、町の総面積の半分が田耕地であるこの町で、農業を営んでこられた皆さまの継続の力によって、歴史の節目ともいえる「大嘗祭」において、胸を張って本町のお米を送り出すことができたことは大変感慨深いものがありました。
私は町民の負託を得て首長に就任してから現在に至るまで、一貫して経営という視点で町政運営を進めています。
特に、自治体経営に影響する人口構造に着目し、国が「地方創生」としてビジョン策定を義務付ける以前に、全国初となる人口ビジョン「定住人口増加プロジェクト」を策定しました。また、駅前一等地に創業支援施設を設置して町内の起業創業の機運創出を図るとともに、企業誘致に注力してきました。その結果、世界有数の精密機器企業が町内へ工場移転を決定し、今年度中の稼働が予定されるまでに至りました。
組織経営としては、職員が働きやすい職場づくりを推進してきました。現在、職員の男女比が全世代では約半数、35歳以下の世代では約6割が女性職員です。今後も男女問わず出産や育児などライフステージに合わせて仕事と家庭を両立し、町の将来を担う職員が希望をもって働くことができる職場環境の整備に取り組んでまいります。
私は、職員に対して特に意識して伝えていることがあります。それは、課題を洗い出し、目標を設定し、具体的な計画を立て、そのために行動することの重要性を常に共有することです。「目標が達成できないこと」と、「得るものがないこと」は同じではありません。十分に精査し、本町にとって必要と判断した施策が、結果的にふさわしいものではなかったとしても、それを見極めることができた経験こそが、次の施策の精度を上げることにつながります。
だからこそ、職員には「失敗を恐れずに勇気を持ったチャレンジ」を期待し、応援することを伝えています。
そんな、高根沢町では現在、重要事業の1つとして「新庁舎の整備」に取り組んでいます。建築から60年以上が経過し、老朽・狭あい化が著しい既存庁舎の建て替えは必須です。「希望の持てるまちを後世に引き継いでいく」の理念のもと、財政計画の見直しによる庁舎整備基金の創設と運用、組織の機構改革等により町制70周年にあたる令和10年度秋の開庁を予定しています。
住民の生活がより豊かになるように、そんな思いを込めた高根沢町のまちづくりのキャッチコピー「くらし 高まる たかねざわ」。町民の皆さまとともに、100年先に続くまちの新たな景色を見るために「未来への投資」を積極的に取り組み、町民の皆さまの力をお借りしながら、職員一同「成長する高根沢町」をめざしてまいります。