福井県永平寺町長 河合 永充
平成18年2月に3町村が合併して18年が経過し、前回こちらに寄稿させていただいたのが平成21年度ですので、そこから数えましても15年が経過したことになります。
少し町のご紹介をしますと、現在の人口は17,800人、町名の由来にもなります曹洞宗大本山を抱く歴史を間近に感じられる町ながらも、福井大学医学部と福井県立大学も立地している学園都市でもあります。また、県都福井市の隣に位置し、北陸自動車道と中部縦貫自動車道の交差地点でもある県内交通の要衝でありながら、町内中央には県内最大の河川である九頭竜川も流れ、住宅街から少し離れますと里山や田園風景など美しい自然環境が広がり、さまざまな顔を見ることのできる町と思っています。
さて、3月16日の新幹線福井開業から5ヵ月が経過し、町への観光入込客数は大本山永平寺を中心に順調で、特に外国人観光入込客数は既にコロナ禍前の水準に戻すなど堅調に推移しています。このまま開業効果を持続できるように、デジタル観光マップ整備など多様な観光ニーズへの対応等さらなる環境整備の充実を進めているところです。
また、令和5年度金沢国税局酒類鑑評会では、福井税務署管内で町内3つの酒蔵が受賞を独占しました。今回の酒造期は猛暑・暖冬の影響もあり、酒米の品質が懸念されると伺っておりましたので、製造管理には例年以上にご苦労があったことと拝察しています。このような活発な取組を進める地元酒蔵を核とした永平寺テロワールを推進するため、酒米の生産技術向上による高品質化・ブランド化を地域の皆さまと一緒に進め、農村の地域活性化にも寄与できたらと考えています。このように人の交流が広がり、町の賑わいが増すのは実に喜ばしいことで、先ほど申し上げました人口減少が進むなかでは、地域経済の活性化に必要不可欠な要素だと考えています。
こうした分野以外にも、町内で行われている国内初のレベル4自動運転の新たな取組として、事業採算性のある運行モデル構築を関係者の皆さまと検討しています。国土交通省所管の「自動運転社会実装推進事業」の採択を受けましたので、自動運転車内で映像コンテンツを楽しめる新しい移動の在り方について実証できる環境づくりを進められると楽しみにしています。
交通に関連して、病院や買い物に向かうにも地方では車を使わないと移動に困難な距離の場合も多く、社会全体が高齢化するのに伴い、自家用車による移動を主としていた住民の方々が免許返納により思うように動けなくなり、新たな行政ニーズが生まれていると感じています。このような課題に対して、町では地域住民がドライバーを務めるデマンドタクシー(近助タクシー)の運行を進めており、既に一部地域の運行では利用される方々からご好評をいただいています。この取組が町内全体に広がるように、交通事業者の皆さまを始めとした関係者の皆さまと意見交換を重ねながら協議を進めていきます。
ほかにも、近年では高齢者の方々が住み慣れた場所で自分らしい暮らしを最後まで送れるよう、地域包括ケアシステムの一環として在宅訪問診療所を整備し、福井大学医学部の指定管理により患者様の病状や入院等の状況も踏まえた、きめ細かな医療の提供等の支援体制を始めております。先ほども申し上げました社会全体の高齢化は、医療・介護現場への影響も大きく、行政も可能な限り支援し続けていけたらとの思いでおります。
国、地方を含めた社会情勢の変化は想像を超える速さで進んでいます。これまで先人が築いてこられた豊かな自然と伝統文化が同居するこの町を大切に守り、時代や地勢に合った施策を進めていくには、従来のやり方に捉われることなく新たな発想と住民の未来のために失敗を恐れない果敢な判断が必要だと思います。すべての人が笑顔になるよう、そして人が集い、お互いを支え合うような町づくりのために今後も全力を尽くしてまいります。