京都府南山城村長 平沼 和彦
溢れる緑が薫ります。時折木津川の水面を小魚が跳ねます。恋路橋を渡る人がいます。大正8年に創設されたレンガ造りの発電所が見えます。私たちの南山城村は、全国に180余りある村の一つです。京都府では唯一の村でそれが、私の郷土に対する愛着にもなっています。南山城村は、京都府の東南端に位置し奈良県、三重県、滋賀県と隣接しています。まるで近畿地方の「へそ」のようにも感じます。
面積は、64.11km²ですが、内70%が山林で、標高も55m~640mと起伏に富んだ正に自然に包まれた村です。
そうした地形を活用し、日本遺産に認定された茶園が広がる宇治茶の主産地となっています。
茶園が広がる風景は、絵画のようでもあり村を訪れた外国の人などがまず初めにカメラに収める風景となっています。
自然との触れ合いは潤いと安らぎをもたらします。そうした自然に包まれながら大切にすべきは、人と人の絆、地域の絆が生き続ける村創りです。絆をキーワードにしながら新たな交流、連携を深め創造力と躍動感に溢れた村創りが求められています。
とは言え、南山城村においても少子高齢化による人口減少や主産業である茶業の担い手、後継者不足の解決は大きな課題となっています。この課題の解決のための施策の一つは、産業の構造化を図ることです。一次産品だけに頼っていては、衰退の不安があります。作って、加工し、販売をすべて村で行う6次産業化を進めることが必要です。
また、自動車免許の返納などに伴う高齢者や障がいがある方などの移動手段の確保についても解決すべき大きな課題です。この解決の一助にと地域公共交通、通称「村タク」を運営しています。移動手段の確保は、人流を活発化し、過疎化対策の助けにもなると期待しています。
さらには「南山城村空き家バンク」の宣伝や情報提供、廃校をリノベーションしたコーヒー店やギャラリー、和紅茶の製造等をさらに充実させていきたいと考えています。
そうした取組を通して、交流人口や関係人口、定住人口間の流れを太くしたいと願っています。
南山城村を流れる名張川、伊賀川は、木津川と合流します。木津川は、かつて物流の主経路でした。近隣町村が川の流れのように「合流」し新しい「木津川」を作っていくことも必要です。近隣の笠置町、和束町、南山城村の二町一村が「相楽東部広域連合」として互いに連携してきた経緯もあります。
村民の皆さまが、この村に住んで良かったと思える村とはどんな村でしょうか。
暮らしが安定していること、人と人との交流があり笑顔が増えること、緑に溢れた自然の中で心豊かに暮らせることなどが思い浮かびます。
そのためには、まずは目の前にある課題、直面している日常的な課題を着実に解決していくことが求められます。さらには明るい明日を目指した村創りを進めるという二つの柱を建てることが必要だと考えています。それは、豊かな自然環境を生かして南山城村で働き、暮らしたいと思える村創りであり、それらを次世代へ継承していくための地域社会創りです。今日の村を創り、明日の村を創るという柱です。
折しも茶畑の新芽が鮮やかです。風が吹けば緑のさざ波が立ちます。木津川の川面が少し眩しいです。村全体が緑に包まれています。
私は、そんな村が好きです。そして夢見ています。高齢者も女性も男性も若者もこどもたちも障がいがある人も本村で働く人も観光客も役場の職員もすべての皆さまの笑顔が緑に溶け込んでいるような南山城村を。