新潟県津南町長 桑原 悠
若くして町長という職責をいただいてから5年。一歩一歩、一進一退苦闘しながらも、町の課題を本質的に捉え、スピード感をもって、またはステップを踏んで、改善改革を行い、将来へつないでいくという基本姿勢を貫き続け、町民や関係者の皆さまとともに、取り組んでまいりました。
私は、大学進学を機に東京へ一旦出ましたが、土のにおいのする場所で生き、仕事をしたいという思い、また家族の願いもあり、12年前、故郷の津南町にUターンしました。以来、町政に携わらせていただいています。現在でも、全国で女性の市区町村長は、極めて少数派です。しかしながら、自身の経験から感じますのは、首長は男女関係なく務められるやりがいの大きな仕事です。経済や政治分野における女性活躍の身近なロールモデルが増えることを期待するものです。
津南町は、日本一の豪雪地帯です。この「雪」が、豊富で清らかな「水」となり、アートにも似た9段の河岸段丘の「大地」をしっかり潤します。そんな自然を敬い、自然に育まれ、自然とともに生きる町、津南。私たちは、町の原点をしっかり見つめることで、次の時代を描き出そうとしています。
人口は9千人を割り、多くの地方同様、人口減少が進んでいます。しかしながら、何も努力せず、チャレンジせず、ただ穏やかに衰退していく道を選ぶのではなく、町のアセットを活かして、しっかりと特徴を出し、チャレンジしていく道を選び、歩んでいます。
町の産業は、農業、建設業、非鉄金属製造業が3大産業です。なかでも農業は、昭和40年代後半から国営事業で開拓された優良な農地基盤を活かして、魚沼産コシヒカリをはじめとする米だけでなく、園芸にも力を入れ、そのほか畜産やきのこなど、複合経営のかたちが確立されています。
最近のトピックスとしては、農業法人の新規設立が増え、世代交代により新たな人材も入り、それに伴い、新しい技術の導入も進み、農業のスマート化が進んでいます。12月には、新潟県で初の開催となる「米・食味分析鑑定コンクール:国際大会 inつなん」を開催します。これを機に、魚沼米のレベルを上げ、生産者や販売者が国内外にネットワークづくりをしていくきっかけになればと期待し、準備を進めているところです。
また、雪下にんじんなど特色ある野菜の認知度を上げ、付加価値をつけていくために、ゴディバジャパンやANAグループのエアージャパンなどと官民連携を進め、商品開発やプロモーションを進めています。町の強みを交渉材料に、企業や周辺自治体と連携を進めていくいわゆる小国としての外交戦略と申しましょうか。私は、町村の発展にはまだまだやり方はあると信じ、チャレンジしています。
加えて、農業を次のステップに進めるため、農地基盤への情報通信環境整備に向かっています。今後は、生産振興、構造政策という車の両輪に加えて、DXを進め、農業の可能性を広げていきたいです。
農業だけでなく、今後も見据え、人口減少が如実になるなか、それぞれの産業をどのようにステップを踏んで伸ばせるか、可能性の分析をしながら、町の企業訪問をしてご意見をお伺いする活動も重ねています。食の産業は、現在、シンガポールや香港をはじめ海外展開中の日本酒などを起点に、他の産品もだんだんと海外販路をつくってまいりたいです。宿泊、お土産、体験型サービスも、官民連携を進めるなかで、国内旅行、海外旅行に組み込んでもらうなど産業として活性化できると考えています。
津南町は合併せず自律の町を選択して、もうすぐ20年が経過します。この間の環境変化は激しいと言って良いと思います。これからの10年、何で税収を上げ、何よりも大切な町民の福祉を充実させることができるか。足元ばかりではなく、この先の津南へ、しっかりと舵を取ってまいります。