福岡県苅田町長 遠田 孝一
苅田町は、福岡県の東部、北九州市の南隣に位置し、面積は約50㎢、人口は3万7,700人程の町です。
町の東側には苅田港臨海工業団地が広がり、日本を代表する大企業とこれを支える多くの企業が立地しています。また町の西側には田園が広がり、白川米といわれる美味しいお米の産地でもあります。
町役場に隣接して、古墳時代前期に築造された畿内型の前方後円墳である石塚山古墳があり、墳丘の長さは約130mでこの時代に築造された古墳としては全国でも屈指の規模を誇り、三角縁神獣鏡も出土しています。また大きさがほぼ同じで古墳時代中期に築造された、畿内にある天皇陵と同様の周濠や造り出しをもつ御所山古墳もあります。こうした文化財の存在は、古来よりこの地が重要な位置にあったことを示しています。
町の産業の歴史は、町内近傍に良質の石灰石が採掘できることから、大正9年に豊国セメント(現UBE三菱セメント)が生産を開始したことから始まります。
その後、国の重要港湾である苅田港の整備が進められ、工事によって出た浚渫土砂などを埋め立てて臨海工業団地が造成され、昭和31年に九州電力の火力発電所、昭和39年には宇部興産と麻生セメントが創業を開始するなど、戦後復興と高度成長期を支えてきました。
国内の産業構造の変化に伴い、昭和48年に日産自動車の苅田町への進出が決定しました。その後、平成17年にトヨタ自動車九州の苅田工場、平成20年に一部が苅田町に所在する同社小倉工場、平成22年に日産車体九州が操業を開始し、町は有数の自動車産業の拠点となっています。
苅田港における輸出額は9千億円(令和4年)で国内港湾の第17位に位置し、町の製造品出荷額は約1.7兆円(令和元年)で市町村別では第24位、町村としては第1位となっています。
さらに近年、バイオマス発電所が3社立地しました。発電所の至近に新たな岸壁が整備されたことでバイオマス燃料を最短距離で輸送できる体制が整っており、3社合計で20万kwの発電能力を持つ、国内随一の再生可能エネルギー集積地域となっています。
平成18年に、町の沖合に開港した北九州空港は、現在は滑走路が2,500mですが、24時間利用可能な海上空港という利便性を活かし、国際航空貨物の需要拡大に向けて滑走路3,000mへの延伸が計画されています。滑走路の延伸により大型貨物機の離着陸が可能となるため、西日本全域をカバーする貨物拠点空港として、国内産業の国際競争力の強化に貢献することが期待されます。
なお、北九州空港の旅客利用者数は新型コロナの影響を受けてしまいましたが、貨物取扱量は、令和2年度15,385t、令和3年度21,819t、令和4年度も過去最高を更新することが見込まれています。
北九州空港に直結して東九州自動車道の苅田北九州空港インターチェンジが設置され、高速道路と北九州空港は、連絡橋を通じて10分程で結ばれています。
町は港湾や空港、立地した大きな産業に支えられ、財政力を示す財政力指数は令和3年度決算値で1.241であり、県内唯一の普通交付税不交付団体となっています。また人口も令和4年11月に過去最多を更新しました。
しかしながら、他の自治体と同様に老朽化した公共施設の更新、子育て世代への投資、快適な生活環境を整えるための計画、防災への備え等、多くの課題を抱えていますが、将来にわたって持続可能な町づくりとするため、デジタル化の推進やSDGsへの取組も並行して進めています。
町の運営を支える町職員の皆さんと力を合わせて、この町を次の時代にもっと良い形、持続可能な町にして、次の世代に引き継ぐことが、私の使命だと思っています。
これからも近隣の市町と連携し、北九州地域、京築地域の発展に寄与するために、努力してまいります。