愛知県豊山町長 鈴木 邦尚
空港と歩む町
豊山町は、愛知県で最も面積の小さな自治体です。6.18㎢というコンパクトな町域の約3分の1を県営名古屋空港が占め、愛知県の航空展示施設である、あいち航空ミュージアムや、宇宙航空研究開発機構JAXAの研究拠点、町の資料館である航空館boonなど特色ある航空関連施設が立地する「ヒコーキのまち」となっています。県営名古屋空港に隣接する都市公園からは、さまざまな機体が滑走路から飛び立つ様子を見ることができ、休日には多くの家族連れで賑わいます。
本町が空港とともに歩みを開始したのは、小牧陸軍飛行場が運用開始となった、昭和19年のことでした。当時は1日2万人を超える周辺住民が協力して飛行場の建設にあたったと記録があります。名古屋市周辺の防衛を目的に建設された飛行場は、米軍による接収を経た後、昭和35年に中部地域の空の玄関口となる名古屋空港として生まれ変わりました。国際線・国内線が飛び交うようになり、経済成長に伴う海外旅行ブームも追い風となって、空港周辺は大変賑わったものです。平成17年に中部国際空港が開港すると国内線・国際線ともに大部分の便が新空港に移転していきました。平成22年に名古屋空港で唯一定期便を運航していた日本航空グループのジェイエアが撤退を表明した際は、路線存続に向けて、愛知県・近隣自治体・経済団体・そして地元住民の皆さまとともに強く要請活動を行いました。幸運にも、㈱フジドリームエアラインズによる就航が実現し、定期便の全廃を免れることができました。こうした経緯から、名古屋空港は地元の人々にとって特別な存在となっています。これからも、親しみ深く愛される空港として我々と共に成長していくことでしょう。
このほかにも本町は、元メジャーリーガーのイチローさんの出身地としても有名です。イチローさんが幼い頃に通ったバッティングセンターや、野球少年時代からのコレクションを集めた展示施設等、ゆかりのある名所がたくさんあり、野球ファンからは聖地として親しまれています。現役を退いてからもなお、次世代の育成のため、精力的に活動されているのを目にすると大変嬉しく誇りに思います。今後のますますのご活躍を願ってやみません。
町制施行50周年を迎え
おかげさまで、本町は令和4年4月1日に町制施行50周年を迎えることができました。
記念すべき節目の年をお祝いし、まちの魅力を醸成・発信していくため、これまでにさまざまな記念事業を展開してまいりました。その1つが、町出身アーティストのビッケブランカさんにPRアンバサダーに就任していただいたことです。彼が町広報誌の表紙を飾ると、広報誌を送ってほしいといった問い合わせが全国から殺到し、影響力の大きさに驚かされました。その他、楽曲のプロモーションビデオ撮影やまちめぐりを通して本町の魅力を次々に発信していただき、大変感謝しています。
さらに、町の夏まつり「とよやまDEないと」を24時間テレビとのコラボレーションにより開催いたしました。 町民ステージやお笑いライブなどの催しに大変多くの方に参加していただき、ヒコーキのまちにふさわしい紙飛行機飛ばしの演出でフィナーレを迎えることができました。
ほかにも、子ども議会や子ども記者などさまざまな事業を通して、多くの人々の笑顔に接することができたことを大変光栄に思います。町と町民が一体となって創り上げてきたこのまちの歴史や文化を継承し、次の50年に向けて飛躍してまいりたいと考えています。
「住みたいまち、住み続けたいまち」を目指して
現在、本町では名古屋空港の隣接地に愛知県による基幹的広域防災拠点の整備が進んでいます。愛知県をはじめ当圏域に大規模災害が発生した際、直ちに救出・救助部隊を投入し、応急復旧活動を展開することができるほか、緊急支援物資の輸送拠点としての活躍も期待されます。平常時は防災教育施設やアリーナ等の誰もが活用できる都市公園として活用していく考えです。
今後30年以内のマグニチュード8~9クラスの巨大地震の発生確率は、70~80%と言われており、災害対応力の強化が急務となっています。住民の不安を解消し、町のより一層の発展を目指すために、何よりも住民の皆さんが安心して住める基盤整備が必要です。基幹的広域防災拠点を要とした、災害に強い魅力あるまちづくりを進めることで、今後住む場所を検討している人々に「選ばれる」まちを、そして、今住んでいる人々がこれからも住み続けたいまちを創っていきたいと考えています。
若い力を活かしたまちづくり
今、私が最も力を入れている施策の1つが、子どもを育てやすい環境づくりです。妊娠中や出産後間もない方をサポートするホームヘルパー派遣事業、子ども家庭総合支援拠点の設置はもとより、町民の方々が日頃から気軽に相談に来庁しやすい役場の雰囲気づくりを大切にしています。子育て相談を行う窓口のすぐ後ろには、子どもたちが遊ぶことのできる広場を設けました。相談中は窓口に常駐する保育士が子どもたちの面倒をみており、利用者からは安心して相談に集中することができると大変好評です。実は、このアイデアは、子育てをしている若手の職員から生まれたものです。堅苦しいイメージがある役場ですが、子どもたちを遊ばせながら気軽に子育て相談に来てほしいという思いが込められています。
若い世代の自由で柔軟な発想は、さまざまな課題を解決するうえでは欠かせないものであると考えています。常識や習慣、価値観に囚われることなく、若者や子どもたちの声を大切にして、豊山町の新時代へと歩みを進めていきたいと考えています。