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ふるさと ふれあい 心を育み ささえあえる中能登町へ

印刷用ページを表示する 掲載日:2023年4月24日

石川県中能登町長 宮下 為幸石川県中能登町長  宮下 為幸​​

​ 中能登町は、石川県の能登半島の中央に位置しており、人口は約1万7千人で、面積は89・45㎢、能登半島で唯一海に面していない町です。

 平成の大合併により、鳥屋町、鹿島町、鹿西町が合併し誕生してから、早や18年が経ち、新しい歴史文化の歩みを刻んでいるところですが、町内には歴史や文化を物語る数多くの史跡が残されており、国指定史跡である石動山や雨の宮古墳群があります。

 また、中能登町の繊維産業の源流となる約二千年前から伝わる麻織物の能登上布が連綿と受け継がれており、能登上布の技術が合繊織物の技術に結びつき、かつては東洋一の生産量を誇る地域となっていました。

 このことから、中能登町では繊維産業を中心とした“ものづくり産業”が発展していた地域でもあったことから、昭和30年代には日本各地から集団就職を受け入れており、若くして故郷を離れて織物工場に就職された従業員の学びの場としての教育環境があるとともにスポーツの大会や文化活動・クラブ活動等が活発に行われていたとの記録があります。

 そして、織物工場で学んだ技術を活かして独立され、町内では最大で300件以上の織物工場があり、夫婦共に力をあわせて働く共稼ぎでの織物工場の経営がされていました。

 そうした環境の中で、子育て環境整備の必要性や、公民館活動など、さまざまなまちづくりが推進されてきました。

 このことから、合併前の旧町においてもさまざまな子育て支援策があり、新町発足後も、さらなる子育て支援の拡充により、直近の中能登町の出生率は、1・83%と県内トップとなり、幸福度が高い北陸3県でも上位にあります。

 特に、廃校となった旧中学校校舎を役場庁舎として改修し、開庁にあわせて職員提案で組織の見直しを行い、新たに「子育て支援室」を発足しました。

 子育て支援室では、妊娠前から18歳までの育児を手厚くサポートするため、多岐にわたる相談窓口を開設し、ライフステージにきめ細かく寄り添う独自の取組を行っています。

 その中で、「お母さんの休み時間」が好評を得ており、赤ちゃんのお世話をする中で、心にたまった悩みや疑問の情報交換ができる場となっています。

 妊娠や子育て期を経て、思春期に至るまでにさまざまな悩みを抱えることが多くあります。

 そうした幅広い悩みをワンストップで、専門知識を持つ助産師や保健師、保育士と管理栄養士等がチームを組み、相談に応じています。

 乳幼児期や学童期、そして思春期のさまざまな悩みに、気軽に話せる機会を設け、心にたまった悩みや疑問を情報交換し、会話を楽しむことに集中できるよう、子育てのベテランが赤ちゃんのお世話をするなど、心置きなく語り合う時間を大切にしています。

 こうした子育て支援の充実により、能登地域にあって人口減少がゆるやかな状況となっていますが、中能登町に移住を希望される方や、空き家を利用し、セルフリノベーションをされ民宿やゲストハウスを開業され経営される方が増えてきています。

 一日一客のおもてなしや、宿泊者同士が交流する宿、そして地元の人と交流する場となっているようです。

 宿泊された方に、宿の印象をお聞きしますと、宿の外から聞こえる鳥のさえずりや、虫の鳴き声、春の水田でのカエルの鳴き声、遠くから時折聞こえる電車の音等、地域に長く住んでいる私たちがあたり前だと思っていた音が、どこか懐かしく聞こえるとのことでした。

 中能登町の古民家の宿に宿泊された方は、ゆったりとした中能登時間の流れを感じて、ひと時の癒しを感じられているようです。

 この地には「能登はやさしや土までも」という言葉が語り伝えられています。

 かつては山岳信仰の霊場として栄えた石動山にゆかりのある言葉で、中能登に暮らす人の情や、風土、結びつきが言い表されています。

 こうした言葉が伝わる石動山において、第10回中能登トレジャートレイルラン大会を今秋開催します。

 今回は記念大会として、歴史をたどる新たなコースも準備しております。

 私も走ることを趣味のひとつとしており、昨年も前日に開催されるプレイベントにも参加しております。

 皆さま方との出会いとふれあいを楽しみに、中能登の地で皆さまをお迎えすることを心待ちにしております。